資料名  『「おばあちゃんの「おてんと様」』

[ねらい]
  ・感謝や思いやりの気持ちをもち相手に接することの大切さを切さを分からせる。
[セールスポイント]  
 ・インパクトのあり,意外性のある資料です。
 ・すぐに使えるワークシートとセットになっています。
 ・実践化をさせる資料です。 
[対象学年]
  ・小学校中学年以上,中学校全学年 
[備考]

  南日本新聞の記事に掲載掲載されていたものをもとに,本人に直接取材しできあがった道徳自作資料です。


【発問】 「この漢字は,何と読むでしょうか。」
     ※「御天道様」の漢字を黒板に掲示してから,発問をする。
     (子どもの反応)
      ・おてんどうさま  ・おてんとうさま ・おてんとさま

【説明】 「おてんとさま」もしくは「おてんとうさま」と読みます。   

【発問】 「おてんと様が見ている。」という言葉を聞いたことはありませんか。
      この言葉の意味を説明しましょう。 例えでもいいですよ。
     (子どもの反応)
      ・神様  ・悪いことをすれば,悪いことが起きる。いいことをすれば,いいことがある。

【指示】 今日は,「おてんと様が見ている。」について,みんなで考えよう。

【めあて】
 「おてんと様が見ている。」

【発問】 おばあちゃんの職業は,何でしょうか。
     (子どもの反応)
      ・看護師さん ・先生

※ 「規範意識を高める道徳授業」には、実物のおばあちゃんの
   写真を掲載しています。








【説明】 このおばあちゃんの職業は,牛乳配達員です。

【発問】 このおばあちゃんについてお話をします。
    このおばあちゃんの名前は,上ノ原良子さんと言い,年齢は,79歳です。
    おばあちゃんは,23歳の時,牛乳販売店を営んでいる夫と結婚しました。
    その時から,牛乳配達を手伝うようになったそうです。10年後,ご主人が
    他界され,それ依頼,一人で一人娘を育ててきました。
    当時は,女一人で子どもを育てるのは,非常に大変でした。
    当時ほとんどお金がなく,月賦(ローン)で1000円の自転車を買い,
    朝は4時30分に起き,地元の家の牛乳配達をし,9時30分から
    11時30分までは,鹿児島県庁へ行き,重い瓶牛乳を持って,
    契約を結んでいた県庁職員約500名相手に,一人一人机の所まで持ってき,
    手渡しで渡していました。
    学級PTAにも,一度も参加することができませんでした。 
    家も非常に貧しかったです。家は,雨漏れもしていました。
    当時,5先生の一人娘さんは,お母さんに,「私の家は,雨漏れがして古いから,
    お友だちを連れてきたいのだけど,我慢しているの。それより,雨の日は,
    お母さんがカッパを着て配達しなければならないから,私が早く大人になり,
    お母さんを普通のお母さんにしてあげたい。」と言ったそうです。
    おばあちゃんは,娘に「げんね思い」(「みすぼらしい思い」とか「はずかしい思い」)を
    させてなるものかと決心し,寝る間も惜しみ,死にものぐるいで働き,ローンで家を
    建てたそうです。

【説明】 おばあちゃんは,この写真のバッグに20本程度ビン牛乳を入れ,県庁の
     いろんな階のお得意様に届けていたんだね。
     ビン牛乳は中身の牛乳とビンを合わせると1本約400グラムだから,
     約8キロのバッグを肩にかけ,時には,2つのバックを担ぎ,何十回も運んでいたんです。
     500本ということは,このバッグを何度も何度も数十回以上,肩にかけて配達をしていたんだね。
     それも当時エレベーターのない4階建てのビルをですよ。
     先生は,おばあちゃんが運んだバッグの重さとほぼ同じものを準備しました。
     みんなで肩にかけてみましょう。

    ※授業を受ける人数に合わせて,バッグを準備しておく。
    ※ビン牛乳の代わりに,ペットボトルに水などを入れ,同じ重さにする。



【発問】 肩にかけてみてどうですか。
     ちなみに,時にはこれを2つ肩にかけて,4階まで行ったり来たりするんだよ。
     (子どもの反応)
      ・大変重かった。

【説明】 おばあさんは,ビン牛乳を手渡しする際,
    「おはよう」「顔色がいいね。」「きばりやんせ」(鹿児島弁で「がんばりなさい。」)などの言葉を,
    一人一人に声をかけていたそうです。   



【発問】 おばあちゃんは,どうして一人一人に「おはよう」「顔色がい
    いね。」「きばりやんせ(鹿児島弁で「がんばりなさい。」)などの言葉をかけていたのでしょうか。
   (子どもの反応)
    ・商売のため ・お話しが好き ・お客が好き 

【説明】 先生が,実際にこのおばあちゃんに聞いてきました。
     おばあちゅんにとっては,お得意様のおかげでおまんまが食べられと思っていたので,つらいことがあっても,
     いつもお得意さんに笑顔で接してきたそうです。
     しかし, 長年,配達をさせて頂いていると,お得さんは,お客というのではなく家族の一員となっていました。
     お得意さんに不幸があった時は,香典を出したり,水害の時は牛乳をただで寄付したり したそうです。
     お得さんは,もう家族の一員のようになっていたので,心の底から,「おはよう」「顔色がいいね。」
     「きばりやんせ」(鹿児島弁で「がんばりなさい。」)などの言葉を,感謝と思いやりの気持ちを込めて
     一人一人に自然とかけていたそうです。

【説明】 ある雪の日,おばあさんは牛乳配達中,滑ってしまい,なんと1ヶ月半入院することになりました。
     


【発問】 このおばあさんには娘さんがいます。
     この娘さんは,おばあさん(お母さん)が入院している期間,どんなことをしたでしょうか。



 
〔 意外な行動をとりました。(省略)〕
   ※ 詳しくは,本にイラストと文で掲載しています。

【発問】 1ヶ月半も配達をしてくれないのだから,あなただったら,新しい業者さんに配達をしてもらいますか。
     ※ たぶん,おばあさんが元気になって帰ってくるのを待つという子どもが多いと思う。
       そこで,「一ヶ月半だよ。」「不便だよ。」「別に業者をかえてもいいのでは」と思い切って揺さぶる。

【指示】 おばあさんが退院後,500人中,何人がお得意さんのままで待っていてくれていたでしょうか。
     次のうちどれだと思います。
     ワークシートに番号に○をつけましょう。  
     (1)100人   (2)250人  (3)300人  (4)450人 (5)500人

500人中,何人?
(1)100人
←   (2)250人   
(3)300人
(4)450人
(5)500人

   ※ まず,上記の紙を出しながら発問します。
     次に,矢印の方向に引くと,一瞬にして下記の答えが出てきます。

(5)500人

全 員
 まっていました。

  ※ この仕掛け(トリック)は,本に掲載しています。
    すごくインパクトがあり,いろいろのところでも使える手法です。


【説明】 答えは,(5)です。

【発問】 どうして,500人もの人のうち,どうして誰一人として,客離れがおきなかったのでしょうか。
     (子どもの反応)
      ・おばあちゃんがすきだから

【指示】この一通の手紙から答えが分かると思います。
    このおばあちゃんが79歳で牛乳配達を止めることを知った長
    年牛乳を届けてもらっていた職員からの手紙です。
    その手紙を先生が代読しますので,聞きましょう。

        
手紙の内容は,省略
  
 ※手紙の内容は,本に掲載しています。

【助言】 お得意さんにとっては,牛乳という商品も大事だったかもわかりませんが,このおばあさんは, 
      もっと素敵なもの大切なものを配達してくれていたのかもしれませんね。
      だから,おばあちゃんにこのような手紙が来たのかもね。

【助言】 最初に「おてんと様が見ている。」とは,どのような意味でしょうかという質問をしましたね。
      「おてんと様が見ている。」とは,分かりやすく言えば,「よいことをすれば,よいことが返ってくるよ。」ということですね。
       おてんと様が,きっとおばあちゃんを見ていてくれていたんでしょうね。

【指示】  このおばあちゃんから,君たちにメッセージがきています。
      先生が代読しますので,聞きましょう。

       手紙の内容は,省略
    
※手紙の内容は,本に掲載しています。

【指示】 授業を受けた感じたことや考えたことをワークシートに書きましょう。

     (子どもの反応例)
     ・ 私は,なんか心が温かくなり,元気がもらえた授業だと思いました。 
       おばあちゃんの頑張りや娘さんの愛情,お得意さんの思いやりなど,人間っていいなあと思いました。
       頑張った人には,おてんと様が見ているんだなあと思いました。しかし,その頑張りは見せかけのものでは
       ダメだと思いました。私もいろいろな人に対して,感謝と思いやりの気持ちを持とうと思いました。
        また,思うだけではなく,私ができる範囲内で行動をすることの大切さがよく分かりました。
        

     ※ 詳しい内容(展開,写真,ワークシート,など)は,

『規範意識を高める道徳授業』
〜粋だね 恥だね おてんと様〜
(大江浩光著・押谷由夫解説・明治図書)

       に掲載しております。 


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