潰瘍性大腸炎とは?


  • 潰瘍性大腸炎とはどんな病気なのか?
    大腸の粘膜に炎症が生じ、潰瘍やびらんができ、下痢や粘血便が起こります。原則として大腸だけにしか起こりません。
  • 潰瘍性大腸炎の発見
    1859年、イギリスで発見される。南北戦争時代のアメリカ合衆国でも報告があった。日本では1929年に10例の報告があったのが最初である。
  • 潰瘍性大腸炎の症状と分類
    • 発病形態
      消化管の粘膜の細胞に炎症が発生。
      (肛門に近い直腸から奥にある結腸に向かって炎症が広がる。)
      粘膜の一部が欠損。
      粘膜の欠損度により、びらんや潰瘍が発生
      消化管の炎症の鎮火(治癒=緩解状態)
      ※治癒状態から再び炎症状態へと繰り返す。
      炎症により障害された組織が瘢痕となる。
      瘢痕による収縮が強くなり、消化管の狭窄が起こる。
      ※消化管の内腔は広がらない
     
    • 潰瘍性大腸炎の症状の推移
      症状がほとんどない時期(緩解期)と悪くなる時期(活動期=再燃期)を繰り返す。
      根治療法は外科手術のみ。
      緩解期にある人と再燃期にある人の割合は7:3
     
    • 潰瘍性大腸炎の分類
      • 炎症範囲による分類
        直腸炎型 病変部が直腸だけにとどまる場合
        病状により病変部が拡縮する場合あり。
        左側大腸炎型 病変部が横行結腸までの場合
        病状により病変部が拡縮する場合あり。
        全大腸炎型 大腸全体に炎症が起こる場合
        病状により病変部が拡縮する場合あり。
        右側または区域性大腸炎型 大腸の右側やところどころに炎症が起こる場合。頻度は希である。
        ※炎症部が狭い範囲なら症状は軽症になりやすく、病変部が広ければ重症になりやすい
      • 炎症の重傷度による分類
        軽  症 下痢の回数=一日4回以下。血便の程度が軽い。全身症状がない。
        中等症 軽症と重症の中間。軽度の貧血(赤沈値30mm/時以下)
        重  症 一日6回以上の下痢。血便の程度が強い。37.7℃以上の発熱。品脈平均90/分以上。
        貧血(Hb75%以上、赤沈値30mm/時以上)。
        劇  症 一日15回以上の下痢。38℃以上の高熱。
        白血球数の異常。重篤な合併症に注意!
       
      • 長期的な症状の現れ方による分類
        再燃緩解型 再燃と緩解を繰り返すタイプ。全体の70%。治療を受けると軽快し、しばらく症状が落ち着いたと思っていたら、炎症が再燃し、それを繰り返す。
        慢性持続型 いったん悪くなった活動期の状態が6ヶ月以上続くタイプ。全体の約20%。
        急性電撃型 激烈な症状が現れて、急激な経過をたどるタイプ。全体の2〜5%。突然の大出血。40℃以上の高熱。一日20回以上の下痢。中毒性巨大結腸症、穿孔を起こし、放置すれば生命にかかわるときがあり、ただちに治療を行う必要がある。
        初回発作型 最初にのみ症状が出現し、その後は症状があまりみられないタイプ。
    • 潰瘍性大腸炎の具体的症状(下記に行くほど症状は進行)
      • 下痢、血便(※痔と間違えやすい。)
      • 粘血便(膿・粘液入り)(※痔と間違えやすい。)
      • 頻回の下痢や粘血便・・・「しぶり腹」
      • 腹痛、発熱、体重減少、吐き気、嘔吐、頻脈、下血による貧血、まれに便秘。
    • 潰瘍性大腸炎の合併症
      • 急激な症状悪化による重篤な腸管合併症
        大出血、穿孔、中毒性巨大結腸症
      • 全身性の合併症=腸管外合併症⇒潰瘍性大腸炎の症状がよくなれば合併症もよくなる。
        関節炎(10%)、皮膚症状(5% 結節性紅斑、壊疽性膿皮症)
        眼症状(虹彩炎、ブドウ膜炎、結膜炎)、口内炎、膵炎、胆石、腎臓結石、肝機能障害(硬化性胆管炎、胆管周囲炎、肝膿瘍、脂肪肝)、肺障害(慢性気管支炎ほか)
  • 潰瘍性大腸炎の発症原因
    現在、決定的な原因ははっきりしていませんが、炎症が起こっている腸管粘膜免疫のしくみが乱れているのは確かであり、有力視されているのは免疫異常説です。
  • 潰瘍性大腸炎の現状
    10〜80歳代のあらゆる層にわたって、発症。
    20歳代に最大の発症年齢のピークがあり、10〜30歳代の若い世代の発症が多い。さらに50歳代に2番目の発症年齢のピークがある。
    男女間の発症頻度に差はない。
    近年では患者数が急増している。