痔ろうとは?


・痔ろうの原因
 腸と肛門の境目には歯状線という波型のへこみがあり(クリプト)、その奥にある肛門腺という腺に腸内細菌が感染することにより肛門腺が化膿することによって膿が大量に肛門の周囲に溜まることにより痔ろうの前段階である肛門周囲膿瘍になる。そして、その溜まった膿が皮膚を破って外に流れだします。一度細菌が進入したクリプトや肛門腺の部分(=原発口、または一次口)は閉じて治ることはなく、絶えず細菌が進入し、中で化膿して膿となって外に流れだします(出口を二次口という)。その過程でクリプトから膿の管、つまりろう管が出来上がるのですが、その状態を痔ろうといいます。

・痔ろうは薬では治らないのか?
 痔ろうの薬は、化膿の拡大を防ぐために抗生物質、痛みや腫れを除くのに消炎鎮痛剤などを使用します。しかし、上記でも書いたように、薬では原発口(=または一次口=膿、ばい菌の入り口)は閉じて治ることはないので、完治しません。それに、ほって置いたらガン化する危険性があるようですから必ず手術が必要になってきます。

・痔ろうの形態的な分類

痔ろうの型 括約筋と痔ろうとの関係 症状
T型 皮下または粘膜下痔ろう TL 皮下痔ろう 肛門の皮膚と内括約筋との間を下に降りてくるもの
TH 粘膜下痔ろう 肛門の皮膚と内括約筋との間を上にいくもの
U型 内外括約筋間痔ろう UL 低位筋間痔ろう 内括約筋と外括約筋との間を下に降りてくるもの
UH 高位筋間痔ろう 内括約筋と外括約筋との間を上にいくもの
V型 坐骨直腸窩(肛門挙筋下)痔ろう 外括約筋の外側を通るもの
W型 骨盤直腸窩(肛門挙筋上)痔ろう 肛門挙筋上を通るもの

・痔ろうの手術方法
1.ろう管切除
 ろう管をいりぐちから出口まですっかり開き、ろう管の壁をきれいに取ってしまう方法。
2.ろう管開放術
 痔ろうの入り口から出口まで全部開いてしまうが、ろう管の壁は残しておく方法。
3.くりぬき
 ろう管を一次口より二次口までくり抜いてしまう方法。
4.括約筋温存術
 括約筋を切らずに痔ろうを治す術式
5.セトン療法(シートン療法)による痔ろう手術(→クローン病と痔ろうへ)