クラッシュについて

ボクシングの試合を見ていると、試合中に選手が目を切ったり、拳を骨折したりすることがあります。
流血が目に入ると何も見えません
この不意のアクシデントによってボクサーの戦力が大幅にダウンし、力関係が一気に逆転することが良くあります。それによって「まさかの番狂わせ」が起こることもあり、観戦者にとってはこの意外性もボクシングの魅力のひとつです。
ボディブローはスタミナを奪います
怪我以外にもボディを打ってスタミナを奪うなど、意図的に戦力をダウンさせるマニュアルはいくらでもあり、いかに相手の長所を封じ、戦力を削り落とすかというのは、試合を組み立てる上でのむしろ初歩的な概念です。
試合を左右する重要な要素であるにもかかわらず、従来のボクシングゲームでは、こういった要素は何故か取り上げられてきませんでした。
そこでボクシング普及委員会では、どこで攻撃を受けても同じようにダメージを受けるのではなく、「一定の個所(クラッシュポイント)に一定のダメージが溜まるとその部分がクラッシュ(破損又は異常が発生)する」ようにしました。これにより攻撃の選択肢が増幅し、よりいっそう頭脳的な駆け引きが楽しめると思います。

クラッシュポイント一覧表

こめかみ:こめかみは頭骸骨の中で一番薄く、狙い目の部分です。ここに有効な一撃を加えるのは、非常に効率的と言えるでしょう。
:目の周辺をクラッシュする(つまり瞼を切る)と視界が悪くなります。視力を完全に遮断されたり遠近感がなくなったりする為、自分のパンチは当たらず、敵のパンチばかり浴びる事になるでしょう。
アゴ:アゴを打つとテコの原理で脳が思い切り揺れます。上手く殴れば一撃で脳が混乱し、ひっくり返ってしばらくは動けないでしょう。揺れの大小は「フレーム」で左右されます。
:額は只でさえ固い頭の中でも一番固く、ここを殴ると拳が割れる可能性大です。誤って殴らないよう気をつけましょう。クラッシュポイントではなく、逆クラッシュポイントです。
:元日本チャンピオンの渡久地隆人選手は、試合中に相手が肩を痛めているのを見抜いた瞬間、肩に攻撃を集中させ、相手の肩を脱臼させてしまいました。当然試合は渡久地選手の勝ち。
この例から打たれる度にパンチのスピードが落ち、クラッシュすればその腕は使い物にならなくなる、というのはどうでしょう。両肩ともクラッシュさせれば完璧に攻撃を封じられるのですが、簡単にはクラッシュしない、という風に。
:拳がクラッシュ(この場合骨折ですね)してしまっては攻撃も何もありません。腕が思うように動かなくなり、仮に当たったとしても拳回りによる威力は期待できないでしょう。(「フレーム」参照)また、クラッシュしたまま打ち続けるとクラッシュの度合いがどんどん酷くなり、最悪の場合拳が潰れて使い物にならなくなります。
内蔵全般(心臓、胃、腎臓)
内臓には神経が集中しており、これにダメージを与えると呼吸に必要な神経まで硬直し、動かなくなります。即ち息ができなくなるわけで、これがボディブローの効果です。
この共通の効果に加え、各器官には下のような効果が追加されます。
心臓:漫画「はじめの一歩」で「ハートブレイクショット」というのがありました。角度、タイミングが合えば、心臓の動きを数秒止めることができ、ショックでその間は動けなくなるというものです。実際、心臓に綺麗にもらうと息もできず、まったく麻痺したようになるそうです。
:特にありません
腎臓:腎臓にはスタミナの素であるグリコーゲンが貯えられています。腎臓が打たれ、腫れるとグリコーゲンの補給ができなくなり、スタミナ切れ(この場合モイントが減り、ダウンしやすくなる事)を起こします。
腎臓への痛みは心臓とはまた違い、食らうと一瞬目の前が真っ白になり、無意識的に膝をついてしまうそうです。
※胃と腎臓に関しては同じパンチでも「胴回り」「(フレーム」参照)でダメージの量が上下します。

”ワンパンチKO”について

ボクシングの目的は相手をKOする事にあります。
KOの定義とは10秒以上のダウン(ダウンの定義は足の裏以外の部分が床にタッチすること)ですから、パンチによるダメージで相手を10秒以上立ち上がれなくする事が、ボクサーの目的と言えましょうか。

従来のゲームではどこにパンチが当たっても同じように「ダメージ」というものが蓄積されて、あるところまで来ると「ダウン→KO」に至るようですが、実はKO(=10秒以上のダウン)の質には主に二種類ありまして、大雑把に言えば
@頭部への衝撃による脳震とう
Aそれ以外の肉体的苦痛(の蓄積)に耐えかねてのもの

となります。

特に@の脳震とうの場合はいわば脳を揺らすことで起こるショック症状ですから、ダメージの蓄積に関係なく試合開始直後の一撃でいきなりKOに結び付けることもできます。リカルド・ロペスの芸術的なワンパンチKOも、綺麗な頭部への一撃によるモノです。
Aはボディブロー(上記「クラッシュポイント」で挙げた内蔵全般への攻撃)の事と思って下さい。一般的に「ボディはジワジワ効く」などといわれますが、ボディブローの効果は長時間持続し、試合中に回復する規模のモノではないようです。
従来のゲームにおけるダウン(KO)の規定は、Aの場合のみと言っていいでしょう。ゲームの展開をより緊張感あるスリリングなモノにするためにも、急所への正確な加撃によるワンパンチKOは是非入れたいものです。
(本当はAの場合でも、急所に綺麗に入ればワンパンチKOは起こり得るようです。要は相手の我慢の限界を超える一撃を打ち込めば良いのでしょう。)

@の場合もAの場合も、KOを奪うにはそれ相応の箇所にそれ相応の一撃でなければなりませんが、実際にはそう簡単にそんな一撃が打ち込めるはずもありません。
その為にも相手の戦力を削るためのシステム・クラッシュは有益なシステムだと思います。
ボディに攻撃を集中させ、スタミナを奪い、動きが鈍った相手にとどめを刺すという作戦の流れが出来ますし、裏をかいてボディに注意を集中させて、がら空きになったアゴを狙うといった駆け引きも出てくるからです。

アゴやボディが打たれ弱い選手はそこをカバーするためのファイトスタイルを模索するでしょうし、対戦相手はその急所をつくため、ファイトスタイルの穴を捜そうとするはずです。それによって豊富な戦略が生まれ、それはさらに様々な方行へ進化し、枝分かれしていくでしょう。

ボクシングは、科学的で知的なゲームなのです。

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