あしたのジョー
(講談社・1〜14巻/愛蔵版等も多数出ています)

70年代の高度経済成長。その熱気を一身にはらんだ男といわれるのは、政治家でも企業家でも、社会運動家でもありません。俳優でもなければロックン・ローラーでもない。
このマンガの主人公・矢吹ジョーです。マンガの内容は知らずとも、「立て、立つんだジョー!!」等の名ゼリフをご存じの方も多いはず。
ジョーのライバル・力石徹が(もちろんマンガの中で)死んでしまったときには実際に葬儀が行われた程、今となっては伝説的なマンガです。
ボクシングマンガはおろか、単純にマンガとしてみても史上に残る名作。

常に何かに飢え、その有り余る情熱のはけ口を求めているような男。それがジョー。
食べたいモノも食べず、飲みたいモノも飲めず、人前で見せ物のように殴り合って。
周りの同世代の人達は毎日気ままに楽しく暮らしているのに、何でそんな思いしてまでボクシングをやるのか。

「他の連中みたいにブスブスくすぶった不完全燃焼じゃない。ほんの一瞬にせよ、真っ赤に燃え上がる。後には何も残らない、真っ白な灰だけ・・・」

そう答えるジョーは、経済成長や安保やらで急激に揺れ動き、激変していく社会の中で「このままでいいのか?」と思いながらも、もう今の社会からは抜け出すことは出来ない。そんな「70年代の男達」の切実な閉塞感と情熱と理想を一手に引き受け、凝縮し、爆発させ、散っていった一瞬の美しい花火だったのではないかと思います。

時が流れ時代が変わっても、人間の本質が変わることはないと思います。
70年代の純で真摯な叫びは、90年代に生きる僕らの胸にも刺さる。
この作品が名作といわれるのは、そういうことなのだと思ってます。

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