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迷蝶の中の迷蝶
タイワンアサギマダラ
〔形態〕 アサギマダラにその色彩・斑紋は類似するが、後翅表面の地色は濃茶褐色で前翅黒色部との色彩の差はアサギマダラのように著しくはないそのため一見した感じはアサギマダラに比べてその色彩は黒ずんで見えるアサギマダラとの最も明瞭な区別点は腹部の色彩で、アサギマダラの暗褐色一黒褐色に対して本種は明るい橙褐色である。
〔分布〕日本では琉球の石垣島、西表島、沖縄本島、奄美大島、宮崎県宮崎市で採集されているが、これらは迷チョウまたは迷チョウによる一時的発生と推定される。
〔生態〕 成虫の習性はアサギマダラと同様で、飛びかたはおそく、各種の花に集まる。年間の発生 ・経過、発生回数など不明であるが、多化性のものであることは疑いがない。
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「迷蝶」という言葉を知っていますか?元々日本には生息しない蝶が春先の季節風や台風などに乗せられて外国からはるばる飛んで来ることがあります。これを「迷蝶」と言います。よく採集される迷蝶に「カバマダラ」や「リュウキュウアサギマダラ」、「アオタテハモドキ」、「メスアカムラサキ」など多数ありますが、中でも1年に一匹採集されるかどうか分らないと言うほど珍しい蝶もおります。「タイワンアサギマダラ(左上写真)」はそういう珍しい迷蝶の1種です。幸運にも私がこの蝶に出会ったのは奄美大島の最高峰「湯湾岳(上中央写真)」にあるコガネムシを採集に行った時のことでした。 |
湯湾岳の登山道(左上写真)を毒蛇ハブの恐怖におびえ、足元を注視しながら歩いていたその時です。この辺では良く見かけるアサギマダラ(上の写真中央)が一匹、いつものように頭上をかすめて飛んでいきました。ハブの事でいっぱいの私の頭の中に「あれ、あいつにしては妙に黒っぽいなぁ」と言う思いが閃いたのです。危機一髪で何とかネットインできました。そしてよくよく見てみるとやっぱしただのアサギマダラではないかと思い、手放そうと思ったその時「待て、やっぱ何か変だ」と再び思い直しました。やはり随分小ぶりで黒っぽい「う〜ん、疑わしきは持って帰れだ」という訳で持ち帰り調べてみると、なんと「タイワンアサギマダラ」でした。ほんとに運が良かったとしかいえません。はるばる台湾から飛んできたこの1匹は仲間を探してこの薄暗い森の中を寂しくさ迷っていたのかもしれません。ちょっと可愛そうな事をしたかなぁ(右上写真はやはり紛らわしい「リュウキュウアサギマダラ」) |
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