宇都酒造


        加世田市益山2431    Tel 53−2260 Fax 52−8882


宇都酒造1   宇都酒造の社長とは、13年程前、私が青年会議所に入っていた頃からの付き合いであり、誠実温厚な人柄と溢れるバイタリティーにいつも敬服させられている。私の芋焼酎に関する知識もこの方から仕入れたものも多い。
  今から14,5年前まだ私が勤め人をしていた頃、「天文館」という名前の焼酎に出会った。その時の印象が今までの焼酎とは違った芋の香りとか、辛みを押さえた新しい焼酎であった。その年、叔父と従兄弟と「天文館」を飲んで、異口同音に「まこて、うんまか焼酎じゃ!やっぱい鹿児島の焼酎は此処たいのとちごちょ!(本当に旨い焼酎だ!やはり鹿児島の焼酎は加世田近辺のと違っている!)」と絶賛していたのであるが、ラベルを見て「宇都酒造?なんち、益山ン焼酎か!(なんと、益山の焼酎なのか!)」と、2度驚いたことがあった。「天文館」というネーミングから短絡的に鹿児島市内の酒造場と思いこんでいたのである。
  それ以来加世田で焼酎を買うときは「天文館」に決めているのだが、貰い物があったり、鹿児島市のとある酒店の地焼酎頒布会に入っているため、一月に一升瓶3本も4本も飲めず、なかなか購入する機会がないのが実状である。
宇都酒造2   最近はテレビをあまり見ないので解らないが、当時は「小粋な街の物語」として、TVCMにも良く出ていたように思う。
  また、5,6年ほど前、川辺町の鏡石鉱泉水で割った「309」特約酒店にて販売して、なかなかの好評を博したらしい。
  工場は益山山村地区の細い路地を入ったところにある。日曜日の午後、アポイントなしで出かけたのでもちろん無人であった。
金峰  正面は酒類の販売店にもなっており「金峰」と言う銘柄の看板が出ていた。そうなんだ、宇都酒造は「天文館」以前は「金峰」を作っていたのだった。今もあるのだろうか?こうなると猛烈に飲みたくなってくるのが人情である。こういうマイナーな銘柄は地元の酒店しか置いていないと思い、休みの宇都酒造販売所を後にして、近所の酒店を探し回るが、なかなか見つからない。やっと竹屋神社近くの小さな店に入って、「金峰」を置いているか訪ねたが、「天文館」を指して、これが「金峰」だと言われてしまった。この店の主では私のこだわりはとうてい理解不可能だろうと諦め、「金峰」の行方は後日社長に聞くことにして店を出た。
  その後、宇都社長に工場の見学を申し入れたら快く引き受けていただいたので再度出かけた。あいにく土曜日の夕方で、従業員は全員帰宅した状態であったが、社長さんがくまなく案内してくれた。芋焼酎の時期は唐芋のとれる9月から11月までで、あいにくこの時期は麦焼酎を作っているとのことであった。それでも、焼酎の出来る行程は同じとのことであるので、興味津々工場内に入る。まず案内されたのが麹室である。ここで麹を発育させ蒸した麦と混ぜさせる。数日発酵させた後蒸留して、焼酎原酒の出来上がりとなるのだが、その後、熟成しなければならない。この熟成が長ければ長期貯蔵焼酎になるのだそうである。それと、工場の外観が黒く煤けて見えるのも、「天使の分け前」と言ってアルコールが蒸着したものらしい。これも良い酒造場の証と言えるだろう。
 

宇都社長
麹室を開けて中の白い麹を見せてくれる宇都社長。
1次発酵
麦と麹が混ぜられ発酵1日経った状態、小さな泡が見られる
2次発酵
1週間以上経って充分発酵し蒸留前の状態。
発酵のガスでかなり体積が増している。
麹の息吹が聞こえるようである。
蒸留機
蒸留機。これを通って出来た原種は43%程度の
アルコール濃度があるという。
  

宇都酒造蔵
  コミュニティースペースに使っている石倉。酒類の貯蔵にも最適。私も欲しい!!


   宇都社長より「金峰」とプレゼントされ、意気揚々と引き上げてきた。これも役得なのだろうか、なんかめちゃくちゃ嬉しい気分になった。\(^o^)/
  まず、「金峰」の味見をしてみる。
  ラベルは南薩の霊峰金峰山を図案化して、吉兆の紋を配した比較的オーソドックなものである。
  生では、結構甘みを感じ、まろやかな味わいであるが、後に芋の味が残る。充分飲める。
 天文館 ロックにすると冷えて甘みが良く引き立つが、芋焼酎独特の渋みはあまり感じず、飲み易さがます。芋焼酎に偏見を持っている人でも充分飲めるはずである。
  湯割りでは、芋の香りが沸き立ち、口中に芋焼酎独特の味わいが広がり、甘みとコクが一層引き立つ。喉を通った後のスッキリ感もいい。旨い!!(^^)
  
  次に「天文館」を味見してみる。
  ラベルは飲み屋の風景を少し抽象画風に仕上げており、現代的なイメージを感じさせる。
  生では芋の香りを押さえた軽い味わいで、舌に刺すような感じも全くない。ウォッカのように冷蔵庫でギンギンに冷やしても良いかも知れない。
  ロックにするとあっさり感はさらに増し、味わいは確かに芋焼酎ではあるが、軽い飲み口は麦焼酎に匹敵するほどの飲み易さである。
  湯割りにしても、芋焼酎の良さの甘みとコクは十分に引き立っているが、芋らしさをそんなに強く主張しているわけではなく、とにかく軽いのである。ワイワイ語らいながらも楽しそうだし、また色んな料理を食べながらその素材を十分に引き立たせ、味わいを深めさせるようである。
  テーブルワインならぬ、テーブル焼酎として気取らずに、料理を楽しみながら飲むのに最適のような気がする。さらに、飲み方を選ばない柔軟性を感じさせる。旨い!!
  

  最近の宇都酒造の様子は薩摩焼酎巡礼ー宇都酒造(株)及び焼酎台帳リレーインタビュー宇都建夫氏をご覧下さい。(H13.10.28)