薩摩焼酎巡礼


  種子島酒造(株)

   西之表市西之表13589−3
     Tel 0997−22−0265
訪問日   平成15年10月26日(日)        

工場入り口。 手前が貯蔵蔵。奥が仕込み蔵。
 
  種子島酒造は西之表市街地より4Km程内陸部に入った小川のほとりにあった。  今は恐らく使われていないのであろう煉瓦製の煙突が焼酎工場の在処を誇らしげに主張しているかのようである。
  工場敷地はかなり広大で、建物が入り組んでひしめき合っているようにも思える。恐らく増設を繰り返して現在の形態になったのではと推察された。 

  一応見学の予約を取っていたのだが、造り最盛期の猫の手も借りたい時期に、一銭にもならない焼酎ノンゴロの応対を快諾下さるのか不安がよぎる。(^_^;)

  

種子島酒造の製品ラインアップ。左の20L箱が甲山水。

  工場内の応接室に通され、工場長で杜氏の渡辺勝美氏が忙しい時間を割いて案内して下さることになった。
  職人特有の頑固そうな風貌から軟弱中年共は少々緊張したのだが、説明は懇切丁寧で授業を聞く生徒のような心境で興味深く拝聴した。(^_^;)

  事務所内には各種賞状が壁一面に掛けられている。 陳列ケースには現在発売されている製品が並べられ、これだけでも目の保養になると言うものである。 その横にミネラルウォーターの段ボール箱が積まれていた。 これが仕込み水、割り水に使う甲山水(こうやますいと読む、これまで誤読してました・・・(^^ゞ )らしい。
種子島の地底170mから湧く銘水を、種子島酒造ではタンク車を使って水汲み購入しているとのことで、水代も馬鹿にならないとこぼしておられた。(^_^;)


 安納芋

 種子島紫芋
  まず唐芋置き場に案内された。 原料芋は全て種子島島内産。 主に使われているのは白センガンという加工用の品種で、デンプン価は高いが食用には適さないとのことである。 今年は芋の出来が均一ではなく、節だってゴツゴツと太った芋もあれば、小さい(熟してないと表現された)芋が混在しているらしい。もちろん芋切りの時にこのような芋は除かれて安定した酒質を常に心がけておられるとのことである。

  かねてから興味のあった特殊芋の倉庫に案内頂いた。やはり一番は最強唐芋安納芋で、食用でも抜群らしく、包丁で芋を切って下さった。 外見は赤くゴツゴツと節くれ立っており、切り口は星状に突起があるように見える。 果肉は橙色でデンプン価だけではなく色んな栄養素を大量に含有しているように思えた。 焼酎もさることながら、ふかし芋で食べてみたいですな。(^^ゞ

  次に「種子島紫」の原料種子島紫芋である。 こちらは結構平滑な表面でさほどゴツゴツはしていない。 切り口も円形で鮮やかな薄紫色をしており見た目の美しさからもかぶりつきたい衝動に駆られる。 この芋を使ったお菓子やアイスクリームが地場産品として脚光を浴びるのも解るような気がする。 ところが渡辺さんは食用にはあまりお勧めでないようなことを仰っていた。(-_-?) やはり安納芋がそれほど秀逸と言うことなのだろうか?
  

 芋切り現場。丁寧な作業は秀逸な酒質の源。

  芋切り場には10名程の方が車座になってまるまると太った芋の山と格闘しておられた。 芋の処理は丁寧で、痛んだ箇所やヘタなどはかなり大胆に切り落とされていた。
  「金兵衛」の旨さはこのような丁寧な作業の賜と納得した次第である。

  次に工場の中に案内されたのだが、ここからの写真撮影は禁止された。(^_^;) 素人が曲解してとんでもないことを書くと危惧されたのだろう。 ここは謙虚に指示に従ったのだが・・・、写真がないと鮮明には思い出せないのである(>_<)。(まあ痴酔性健忘症故大したことはないのだが・・・(^_^;)
で、断片的な記憶を羅列することに・・・(^^ゞ

  工場内には仕込み用のカメ壺が地中に整然と埋められ、壁天井は酒蔵特有のプロレラレア菌により黒く煤けており、現在まで脈々と続く歴史を感じさせられた。 

処理された芋は2階の蒸し器に送られる。

  仕込みの時期をお聞きしたところ、今年は8月から3月まで造られるそうで、昨年の約2倍の5000石の出石高を予定とのことで、瓶詰めの段階では日産約5000本程になるそうである。(・_・) 
  やはり県外需要が増加し増産を余儀なくされた状態で、案内された製品の倉庫にも在庫品が少なく、出来たはなから出荷される状態らしい。

  現在消費が伸びているのが「種子島紫」「久耀」らしい。 「久耀」の名前の由来を尋ねたところ、種子島酒造は12年前に久岡酒造を買い取って焼酎造りを始めたとのことである。 その久岡酒造の代表銘柄が「久耀」であり、なんと渡辺氏は久岡酒造から継続して種子島酒造で焼酎造りに励んでいるとのことである。 いわば種子島焼酎の生き証人とも言えよう。(^^)
  
  現在も貯蔵焼酎に力を入れ、そのための貯蔵蔵も増設中とのことであったが、なんと久岡酒造時代に仕込んだ34年貯蔵焼酎が一タンク眠っているらしい。 こうなると好奇心の固まりの愚生、「どげな味がすっか興味があっですね〜・・・。 試飲はしやったですか?(*^_^*)」とあわよくば試飲の栄に浴しようと、水を向けてみたのだが、「私も飲んだことがない!」と言われ、陰謀は敢えなく頓挫してしまった。(^_^;)


 渡辺工場長と記念撮影
  使用麹の比率は7:3で白麹が多いとのことであった。 やはり代表銘柄「金兵衛」「久耀」が好評だからであろう。
  濾過に関してはきっちりと力を入れておられ、通常のフィルター濾過の他に最新鋭の極低温(−5度)で油分分離させるタンクも稼働中とのことであった。

  最後に瓶詰め工場を案内され、今年仕込まれ瓶詰めされたばかりの最高級銘柄「安納」を試飲させて下さった。(^^)v 今年の焼酎なのに既に熟成したようなまろやかさ飲み易さなのである。 アルコール度数25度ながら原酒を思わせる厚みのある飲み応え。 思わずうっとりとし、「こいは堪らんど!」とこだまさんにグラスを回した。 一同瞠目!

  県外需要の増加により種子島4蔵元の中では最も勢いを感じさせられたが、いわゆる大量生産然としたところは全くなく、あくまでも伝統に則った製法に軸足を置き、加えて新技術や貯蔵酒などの新機軸等も積極的に取り入れるという柔軟性を持った蔵との印象を受けた。 種子島酒造の焼酎に共通する柔らかく濃醇な味わいは種子島の風土が生み出した原料芋と飾り気のない職人さん達の技術と真心の産物と納得した次第である。 渡辺さんはもう年だから引退したいと仰っていたが、後進も育成もさることながら、これからも我々「金兵衛」ファンのために是非とも第一線で頑張って頂きたい。 お忙しいところ本当にありがとうございました。m(_'_)m
 
   精酎組種子島に遊ぶその2


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