桜島新酒 


桜島新酒
      本坊酒造津貫工場    加世田市津貫6594
      ゲットした日:平成12年10月21日
  

  芋焼酎の原料唐芋の収穫は9月であり、これを米麹で1次発酵させた後蒸留し、通常は2〜3ヶ月以上タンク内に貯蔵したものを製品として売り出すのであるが、「新酒」とは蒸留したて、ないし貯蔵期間が極めて短いものを割水して商品化したものである。 すなわち10月から11月にかけて季節限定で出回る焼酎だけが「新酒」の称号を勝ち取ることが出来るのである。 
  ちなみに私が回り得た酒屋では、「桜島新酒」以外には「さつま白波新酒」および「小鶴新酒」を見つけることができた。 
  蒸留酒は時間をかけて貯蔵したものほど、コクが出てまろやかな味になるのが一般的である。
ウイスキーやブランデーなども30年ものとかが1本数万円で売り出されているし、沖縄の泡盛も素焼きの瓶で長期貯蔵された古酒は、信じがたいまろやかな味で我々を魅了している。
  最近、麦とか米焼酎でも長期貯蔵の高価な焼酎が出回っており、静かなブームになりつつある。
  翻って、芋焼酎はどうかというと、確かに「久耀」など長期貯蔵のものは芋焼酎の味わいを残しながらもまろやかであり大いに評価できるところであるが、焼酎古酒の試みはこれからも試行錯誤しながら継続されていくだろうと思われる。
  しかしながら、芋焼酎には他の蒸留酒には到底真似の出来ない、「新酒」という楽しみ方も出来るのである。 新酒ではボジョレーヌーボーを始めとするワイン等が、ジューシーでさっぱりした味わいで有名であるが、芋焼酎の新酒もそれに劣らぬ華やかな味わいを感じることが出来る。
  1次もろみを蒸留することによってアルコールだけでなく唐芋に含まれる芳香を発するエステル類なども同時に蒸留されてしまう。 芋焼酎の場合はこのエステル類が新酒の間の方がより甘く華やかなのである。
  実際に「新酒」を味わってみると、生で飲んでも芋焼酎独特の華やかな甘さが際だっている。 こういった状態をフルーティーと表現して良いのか定かではないが、清冽でなおかつ芳醇な味わいである。
  お湯割りにして飲むと、芳醇な味わいはより一層引き立ち、軽快な後味と共に、何杯でもお代わりしてしまう程であり、ついつい飲み過ぎてしまう。 困ったものだ(^_^;)。 
  先日所用で名古屋に行き、やむなく麦焼酎のお湯割りを飲んでみたのだが、その軽薄で無機質的な味わいに辟易したのであるが、まさしく対比をなすようなふくよかな清冽さが「桜島新酒」にはある。 これは秀逸としか言いようがない。 
  季節限定の逸品が県外不出というのも、鹿児島に住む人間だけに許された贅沢と言え、鼻の穴が広がるような快感が得られすこぶる良い。
  ただし、「芋焼酎の臭いがどうも・・・」と宣う御仁には「新酒」の良さは到底理解不可能であろうが、鹿児島県にはそのような不謹慎な非県民というか奇人変人の類が生息しているとは到底考えられないので、特に問題とすべき事柄でもないであろう。