万夜の夢


          田崎酒造   日置郡市来町大黒696  Tel 0996−36−3000
        ゲットした日   平成12年12月28日


   愚妻がコープ鹿児島のチラシを見て、「焼酎6本1万円で出ているけど、これって安いの?」と聞いてきた。 なるほどそのチラシを見ると伊佐美種子島しまむらさき始めこだわり系の焼酎が6本1万円、1本換算1,700円ほどで「安い!」と、食指を動かされたのであるが、そのチラシの裏にあった45年熟成という文字に釘付けになってしまった。
  そして値段はなんと720mlで1万円
  ウイスキーはせいぜい20年もので1万円以上はするし、上等のワインなんかものの1時間ぐらいで飲み切るのに何万円もするのだから、これって安いかも・・・と不思議な納得をしてしまった。 欲しいとなったらどうにも止まらない性分なので愚妻に何とか懇願するが、通説の如くなかなか聞き入れてもらえなかった。
  大人だってクリスマスプレゼントが欲しいとか、「身も心も熔けさす極上の一滴を味わいたくないのか!」など聞こえの良い話をしたり、45年という歳月が如何に貴重なものであり、芋焼酎の未知なる古酒への試みが如何に希有なものであるかを力説して、どうにか籠絡する事に成功した。\(^o^)/    もっとも敵は私よりは遙かにしたたかで、平成13年はゴルフを減らすことと自分もクリスマスプレゼントを買うことを約束させられてしまったが・・・(^_^;)
  12月14日ぐらいに注文し、1日千秋の思いでコープの配達を待ち、ついに手に入れ、ご開帳! ワクワクしながらラベルを見ると、なんと原料はとなっているではないか!
 「えっ!芋じゃないのか! 米焼酎なんて一言もチラシには書いてはいなかったではないか! 騙された!」と一応芋焼酎伝道師を自負する手前、愚妻の前では憤慨しきりだったのだが、返品する気には更々ならない。 45年貯蔵という偉大で崇高な企てに対する畏敬の念の方が遙かに強かったのである。
  説明書によると昭和28年、なんと私が3才の時に仕込んだ米焼酎であり、その後地中に埋められた素焼きの壺で45年間静かに眠っていたらしい。 熟成途中で焼酎の活性化を図るため、12年古酒が約40%加えられている
  色はほぼ無色透明で、古酒の持つ上品な薫りが静かに立ち、芳醇でまろやか、清冽にして爽快、名状しがたい耽美な味わいである。 米焼酎なので元々クセはないのだろうが、それにしてもこの旨さは何だ! 口にしたその瞬間、アニメの料理番組で表現されたような多幸感が広がる。 愚妻にも「まあ、一口飲んでみたら!」と自信を持って勧めたところ、かねては焼酎は何でも一緒の彼女もさすがに「旨い!違う!初めて!」と納得の様子であった。
  芳醇な味わいが口の中に残り、アルコール分が揮発した後、また舌が潤いを求めて大脳を刺激し新しく焼酎を注ごうとする。
この天使の無限地獄とでも言うべき連鎖反応を断ち切ることが出来るのは、「ものすごく高価でレアーな焼酎!」と言う理性だけであろう。
  ゆえに私はこの焼酎が無くなるのが怖くて、1週間に1〜2回、全くしらふの時にお猪口1杯だけ頂くことにしているが、その度に「旨い!」と唸っている。 そして酩酊後には決して目の届かない場所に隔離することが肝要だろう。 さもなければ翌朝激しい自責と後悔の念に襲われるのは必定と思われる。
  芋焼酎の10年貯蔵酒の酔十年も昨年暮隠密里に取得したが、これからもどんどん長期貯蔵に挑戦し、薩摩の誇り芋焼酎を世界に知らしめて貰いたいものである。