工場入り口。左方に蔵は伸びている。なんたるヘボな写真。(-ー;) |
車は目映い光の中、国道58号線をさらに南下を続け南種子町市街地に入った。 役場を過ぎてすぐナビ役のH女史が「ここですよ。」と案内された。 ところが辺りを見渡しても商店街の建物ばかりで、お寺はあるものの、酒蔵らしき構造物がない。 いささか狼狽しているとH女史は委細構わず、隣の店の中に入って行かれた。 よく観ると
「上妻酒店」。(^^)社長夫人に来意を告げた所、昼休みで従業員はいないが、社長はおられるので見学は大丈夫とのこと。\(^O^)/
アポイントなしの蔵見学で、当初は記念撮影だけと諦めていたのを、H女史の職務上とは言え交友の広さ深さにただただ感謝!
H女史に引き連れられて、お寺の裏手に回ると焼酎蔵が現れた。 昔懐かしい3階建て程の蔵である。 再度見学の許可を乞うためH女史が蔵の中に消え、しばらくしてにこやかな表情で蔵の中に手招き下さった。
垂れ始めた原酒の説明をする上妻博見社長。 |
上妻博見社長が柔和な表情で蔵の入り口まで出迎えて下さり、挨拶もそこそこに蒸留機の前に案内された。 そこにはなんと透明な
蒸留原酒が垂れているではないか!(o_o) つい先ほど垂れ始めたとのことで、蛇口から原酒をコップに汲み出し、試飲させて下さった。 何たる僥倖!\(^O^)/
「黒こうじ南泉」の原酒で、目下
アルコール度数50度を越えるらしい。 グラスをかざすと明らかに白濁した原酒である。 蒸留仕立てのガス臭とセメダイン臭が強く荒々しく強烈であるがもう既に
「南泉」の柔らかさを宿命付けられているような味わいなのである。
蒸留仕立ての原酒に一同ノックアウト。(^_^;) |
回し飲みした全員で感嘆していると、今度は垂れたタンクの中をかき分け柄杓ですくった原酒を試飲させて下さった。
アルコール度数70度前後。(@_@) セメダイン臭も半端じゃない。 挑み掛かるような強烈さである。 このまま吐息に火を付ければゴジラの如き放射火炎も可能かと錯覚しそうになる。 これをグラス1/3程でも飲もうものなら、たちどころにその場に崩れ落ちる危険性を本能的に察知してしまう程威圧的なのである。 しかし何とも名状しがたい恍惚感がある。 一同回し飲みすると驚愕とも陶酔とも判別出来ない複雑な表情が並ぶ。
そして上妻社長は我々の反応を楽しんでいるかのようでもあった。(^_^;)
自動製麹機。 |
三角麹棚。温度管理は抜かりない。 |
麹米を下のタンクに落とす穴。 |
一次仕込みタンク。右上逆煙突状筒が穴に続く。 |
スリッパに履き替えワクワクしながら3層構造の工場最上階に登った。
ここには
自動製麹機と
三角麹棚が鎮座していた。 自動製麹機はかなり使い込んだ代物で歴史を感じさせる。三角棚の麹米の中には温度計が差し込まれており、麹米を見る蔵元のちょっとした目つきにも温度管理の重要性が滲み出ているような気がした。
使用麹は最近の都会の焼酎ブームのせいか
黒麹が多くなったとのことである。 1回の仕込みに使う米の量は450Kgで麹菌種付け3日目に、投下孔から2階?の1次仕込みタンクに移される。
下の階(一次仕込みタンクの上部に金属製メッシュ板がはめ込まれている)にはステンレス製一次仕込みタンクが整列していた。 タンクには浮遊雑菌が混入しないようにビニールが被せられており、蔵元の神経の使いようが解る。
麹米に水と酵母を加えた一次醪を仕込み6日目に、芋掛けする。 使用する原料芋は
島内産白さつまで米の5倍量を仕込む。
芋掛けしたばかりの黒麹二次醪。 |
一次タンク横には当日芋掛けした
二次醪が既にグツグツと発酵を始めていた。 新たな生命の躍動はいつ見ても感動ものである。(^_^;)
左手段差を上がった所に二次仕込みタンクが整列していた。 2次タンクは2列×4合計8個あり、二次仕込みの期間は8〜9日だから、上手い具合にローテーションするのだそうだ。
二次仕込みタンク。 |
ここのタンクは入り口が狭められた狭口瓶のような形態をしている。 そう言えば
四元酒造のタンクもこのような形態だったが、種子島に特徴的なのだろうか?
次に原酒タンクに案内下さった。
上妻社長はやおら一つのタンクの蓋を開け、中から原酒を柄杓で汲み出し、ガラス容器に移し始めた。 期待感と理性が交錯する思いでガラス容器を見詰めていたら、それを愚生に渡されるではないか。\(^O^)/
取り敢えず理系出身者として理性的に液体を観察することに・・・。(^_^;) うむ、程よい濁りがある。 薫りは・・・?なんちゅわならん芳醇さ!堪りません!
ここまで来ると自制心はあっけなく霧散してしまっていた。 「ちょこっち飲んでよかですか?」と愚生。 「どうぞ、どうぞ!(*^_^*)」とにこやかな蔵元。
ガス臭が僅かに残るけれども、もう既に角が取れまろやかで柔らかい味わいではないか。何たる濃醇! グラスをみんなに回し、貪るように試飲(殆ど飲酒(^_^; )し一同瞠目。
原酒タンクを前にポーズを決めるこだまさん。 |
税務署申告用の検定タンクから汲み出した検定済み原酒は
アルコール度数が36〜7度とのことである。 ほかにも原酒タンクが並び、蒸留数日の原酒があの濃醇さであれば、これが熟成したら・・・(・_・)、
「南泉」恐るべし!と畏敬の念を抱かずにはいられなかった。(^_^;)
最後に入り口の蒸留機前のタンクに戻って、再度垂れている原酒を試飲。 (まだ試飲するか!(^^ゞ )
アルコール度数は30度台後半。
中垂れと言って良いだろう。 最初のセメダイン臭は大分薄らぎ、飲み易い。
我々が恍惚とした表情を浮かべていたら、H女史が水道に口をゆすぎに行った。 やはり一般の人には刺激的過ぎるのか!(^_^;)
蔵の前で蔵元さんを囲んで集合写真。 |
恥ずかしがる蔵元を外に連れ出し、強引に記念撮影。(^_^;)ここでも中央には立ちたがらない。何たる謙虚さ! 鉄面皮の利権政治屋先生方も少しは見習って欲しいものである。(^_^;)
何ら飾り気の無い純朴な蔵元が自然体で淡々と醸し出す蔵、さらに温かく優しい種子島の人情風土、これら全てが
「南泉」の原風景なのである。
焼酎は人そして土地と改めて再認識させられた。 この高揚感はたんに試飲が出来た喜びだけではなく、焼酎造りの人を知り、蔵の空気と温もりを肌で感じたことに起因するのはいうまでもない。(^_^;)
予約なしに突然訪れたヨクロボ集団に嫌な顔一つされずに、終始にこやかに案内説明下さったばかりでなく、貴重な原酒を試飲までさせて下さった上妻社長には感謝してもし足りない思いであります。 本当にありがとうございました。m(_'_)m
運転のため殆ど試飲出来なかったたぶっちゃんには申し訳なさが募るが、我々焼酎ノンゴロは大いなる充実感に浸りながら蔵を後にしたのである。
今回の種子島蔵巡りは蔵元さん達の暖かいご厚情と焼酎ノンゴロに対するご理解、並びにH女史の挺身的交渉力、さらに運転手に終始して下さったたぶっちゃんの犠牲的愛酎精神及び同志愛がなければ、とても為し得なかったものであり、感謝!ただ感謝!m(_'_)m
精酎組種子島に遊ぶ−その2へ
表紙 焼酎の部屋 薩摩焼酎巡礼 ア酒造 種子島酒造 四元酒造 三岳酒造