祟り

タノカンサー(田の神)撮影の時聞いた話。
読みにくいとは思いますが,鹿児島弁の話し言葉と伏字があります。

 タノカンサーの写真を撮影していると,当然のことながら地元の人々と言葉を交わすようになってくる。先ず,石像を撮影する人間が珍しいのか好奇心旺盛な子供たち,そして農作業の手を休めている人々やたまたま通りかかった人々と,話し始めるきっかけもさまざまだ。入来町に撮影に行ったときは,私がタノカンサーの所在地を尋ねたことがきっかけとなり蒲生町に住んでおられる同姓の方と知り合って(私の数十代前のご先祖さんは蒲生町の出身で,かなり低い確率で親戚かもしれない)県の文化財に指定されているタノカンサーを教えてもらったりもした。

さて,そんな中でとあるところに行ったときに聞いた話。
やっと見つけたそのタノカンサーは個人所有で像の高さは30cmくらいの小さなかわいらしいものだった。
個人所有ということは,所有者に一言はお断りを申し上げてから撮影に入るのが道理というものであろうが,個人所有でも家の木戸口に田んぼに向けて,生垣の根元に置かれているということはお断りしなくても大丈夫だろうと,撮影した。
狭い道路に堂々と駐車していたものだから,当然のように家から人が出てきて(70代の男性)怪訝そうな目つきをして撮影を見ておられた。撮影が終わってから,お断りとお礼を申し上げると,「こげんとを写さんて,ほけ,うっかもあっどが?!」と言われたので「この辺のタノカンサーを全部撮影しました。」と申し述べると,納得された様子で,近くのタノカンサーを教えていただきました。

本題に入りましょう。
撮影したタノカンサーは,江戸時代に僧侶だったその男性のご先祖が何処からか連れて来たことや,今ではお孫さん達の遊び友達(?)になっていることなど話されました。
その後,自分の体験談を話し始められました。

「あたいが,小まんか頃,こんタノカンサーに,シベンのひっかけたやな,○ン○マがものすご腫れてな,動きゃでけんごッひんなッてな,親ンしが,ひったまがって,タノカンサーを洗るて,焼酎(しょちゅ)どん上げて祀ってくいっやたや,腫れもひいたっじゃらな。タノカンサーて馬鹿(バケ)しとったいじゃいどん,ちゃんと魂(たまい)が入っとっとじゃんなあ。」

話を聞いて笑ってしまいましたが,あながち「自然を大切に。」とか「物を大切に。」といった決まりきったキャッチフレーズだけではないものを感じました。

撮影の前には,周囲の要らないものを除去しますが,そこを立ち去るときはタノカンサーについていた土を払いのけました。

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