「はい,○○です。」
−−3つの会社からの電話−−

 バブルのころは,貴金属の先物取引の勧誘電話がいつもかかって来ていたが,不景気になり金利が下がってからは,証券会社から電話が来るようになった。
 電話で勧誘するときには,声で好印象を与えなければならないから,発声だけでなく電話応対のマナーもより重要な要素であるにも関わらず,そのマナーたるや惨憺たるもので,電話をかけて来た本人の人間性を疑いたくなると同時に,その社員を雇っている企業の姿勢をも疑いたくなるときがある。

これは,最近かかってきた3つの電話の話である。

その1
とある土曜日の朝,電話がかかってきた。
「はい,○○です。」
「お世話になります,私,△▽証券の××といいますが(「申しますが」だろうが?),○○ □さんは,おいででしょうか?」 ま,謙譲語を使えないのは仕方ないとしても,まずまずの切り出し方だと思っていました。
私:「□は,出かけておりますが,どのようなご用件でしょうか?」
相手:「お出かけですか?お仕事でしょうか?」
私:「はいそうです。」
相手:「えっ,今日は土曜日ですけど,土曜日も仕事ですか?」
私:「そうですけど。」
相手:「わかりました,あらためて電話をいたします」

そして,次の土曜日

「はい,○○です。」
「お世話になります,私,△▽証券の××といいますが,○○ □さんは,おいででしょうか?」と同じ人間から電話がかかってきた。
おお,また電話が来たなと思って前の週と同じように,
私:「□は仕事で出かけておりますが」
相手:「えっ,今日は土曜日ですけど,土曜日も仕事ですか?」
相手もマニュアルに書かれているのだろうか,同じように切り返してきた。
マニュアルには書かれているかもしれないが,最近の丸型温熱ヒーター以上に瞬間的に熱くなる私は,冷静を装いながらも「土曜日も仕事です。」といいました。
すると「土曜日も仕事とは珍しいですね。」と言い返してきたものだから,「あんただって,仕事で電話をしてきたんだろうが? 土曜日に仕事をしてるじゃないか!!」と,怒鳴ってしまいました。
それ以来,その会社から電話は来なくなりました。

その2
「はい,○○です。」
「私,○ー▽の××といいますが,○○さんのお宅でしょうか?」
ちゃんと,「○○です」といってるのだから,わざわざ問い質すなと言いたかったが,そこは,ぐっと我慢していると,
相手:「お宅に,○○ □さんがいらっしゃいますよね?」
私:「はい,おります。」
すると,相手は言いました。
相手:「□さんのほう,お願いします。」
私は,目が点になる,いや,自分の聴力を疑ってしまいました。
例によって「いない」と言うと,決まり文句の「あらためて,電話いたします。」で切れました。
今度,電話をかけて来て「ほう」を使えば,言葉遣いを教えなければと思っています。

その3
「はい,○○です。」
「お世話になります,私,□□証券の**といいますが,○○ □さんは,おいででしょうか?」
「いえ,出かけていますが,どのようなご用件でしょうか?」
すると,
相手:「10時には帰ってこられますか?」
私:「えっ,いつの10時ですか?」
相手:「夜のです。」
私:「貴方ね,夜の10時に電話して迷惑だと思わないんですか?どのようなご用件でしょうか?伝えておきますが」と言うと,
(るっせーオヤジだな,なめんじゃねー)と言いたそうな口ぶりも含めて「結構です」と電話は切れました。

「人のふり見てわがふり直せ」ということわざがありますが,わが社の社員もこんな応対をしてるのではと不安になってきました。

最後に,何を隠そう○○ □は私自身です。

 オシマイ