frower2001年  2月のフィールドノートから

2月6日(火)曇り  夜、某林道で
 冬場、林道上のアマミヤマシギは確実に減っているように思う。夏の間たくさん見られた場所でも見づらくなる。一部は
沖縄や南部奄美諸島などに渡っているのだろう。それと同時に行動パターンが変わるようだ。夏は林道の真中にも平気
で出てきて車のヘッドライトが当たってもあまり逃げないのに、この時期は林道の脇でじっとしており車がすぐ近くまで寄
っていきなり飛び立つということが多い。飛び立たないと気づかず通り過ぎるので案外見落としている個体も多いかもし
れない。ともあれ、まだまだ知らないことだらけだ。
 水辺でイシカワガエルの声が聞こえた。ヒョーとひと声ずつ、間隔をあけながら鳴く。カエルらしからぬ声だが、渓流の
水音に消されないように、こんな高い鳴き声を発達させたのだという。しばらく車のライトを消して、水音と鳴き声の幽玄
な競演に聞き入る。声はすれども姿は見えずというのは、野生動物の観察ではよくあること。期待せずに、電灯の光を
当ててみると、意外と近くにいるではないか。急いでビデオを構えたのだった。
 沖縄県では天然記念物に指定されているこのカエル、鹿児島県では指定されていないのをいいことに奄美大島で捕
獲され、販売されている。姿が美しいことに加えて、希少価値があるため高値で取引されるという。沖縄で保護されて
いることで価値があがり、奄美のイシカワガエルの乱獲が助長されるという皮肉な結果だ。こんな近くで観察できるこ
とは嬉しい限りだが、密猟者の手が伸びないよう祈るばかりである。


▲渓流で鳴くイシカワガエル


*番外編 2月13日(火)〜15日(木)  沖縄本島
 久しぶりのヤンバルである。奄美の林道を走りなれると、沖縄の林道が妙に立派に思える。ヤンバルでは主だった林
道がほとんど舗装されているためだ。側溝にリュウキュウヤマガメやイボイモリなどの小動物が落ちても這い出せるよう
にスロープを設けてある点は評価できるが、それを免罪符にして無闇に舗装が進んでいるように思う。生き物にとって
は這い出やすい溝を作ってもらうよりも、路肩には草が茂り所々に水溜りが残った道のほうが当然まだましなのである。
もちろん道なんてないほうがもっといいに決まっている。沖縄本島の人口密度を考えると渇水対策が不可欠であること
は理解できるが、それにしてもダムの多いこと! どれだけの森林が失われたことだろう。またダム建設に伴って一層
林道敷設も進んだのであろう。
 夜は辺野喜ダム周辺を中心に回るが、6年前に来たときには簡単に観られたヤンバルクイナが木の上で休む姿は見
つからず。アマミヤマシギはところどころで目撃。イシカワガエルが鳴く沢も確認できた。
 昼は大国林道がいい。大国橋あたりのシイの原生林の迫力は相変わらずすごい。ただここも、湧き水を汲みに来る
人がひっきりなしに訪れるようになっており、交通量が増えたことが懸念される。それでもまだノグチゲラの鳴き声も聞
こえるし、アカヒゲもよく人前に出てくる。奄美のアカヒゲは亜種アカヒゲだが、こちらは亜種ホントウアカヒゲ。オスの額
まで橙色であることと、脇腹に黒斑がないことで区別できる。


▲亜種ホントウアカヒゲのオス

 ヤンバル以外では、喜如嘉、屋我地、億首川河口、泡瀬運動公園などを回ってみた。中ではマングローブ林と水田地
帯を一緒に楽しめる金武町の億首川河口が面白かった。セイタカシギがマングローブの陰で休んでいたり、シギチの仲
間が水田でエサをとっていたり。なんでもないところでシロガシラに出会ったりするのも、沖縄ならではの光景である。


▲同じヒヨドリ科ながら姿も声もヒヨドリよりもよいシロガシラ


2月27日(火)  奄美自然観察の森
 ルリカケスが巣づくりを始めたようで、林道を走っていると2羽連れ立ってブッシュとなった斜面から飛び出してきたりす
る姿をよく目にする。車を停めてしばらく息を殺していると、巣材に使う小枝を加えた親鳥が藪の中に入っていく。そっとし
ておいてあげよう、もうしばらくすると幼鳥の姿も観られるかもしれない。
 自然観察の森の池では昼間もアマミアオガエルがかしましく鳴いている。岩の隙間などに隠れて鳴くので、声のすぐそ
ばまで近づいたとしても姿は見えない。夜は比較的無防備に姿をさらしているが、昼は行動も慎重だ。池に覆い被さった
植物や周りの石などに泡状の卵塊を産みつけている。モリアオガエルと同様、アオガエルの仲間なので、こうやって水か
ら離れた場所に卵を産む。孵ったオタマジャクシは尾で泡を掻き分けながら泳いで、自力で水面まで到達しなければなら
ない。
 下の池ではヒメアマガエルが群れとなってだらしなく浮かんでいる。ヒメアマガエルはアマガエルという名前なのにアマ
ガエルの仲間ではなく、ジムグリガエルの仲間。カエルなのに泳ぎがへたくそだ。四肢をのばしただらんとなった形で、た
だただ浮かんでいたりする。表現は悪いが、土左衛門のようだ。それでも異性は気になるのか、メスの上にオスが乗っか
ろうとし、そこにまた別のオスが近づいてくる。結果、電車ごっこしているみたいに連なったり、押しくら饅頭をしているみた
いに団子みたいになったり。ユーモラスである。浮かんでいるヒメアマガエルに近づいて背中の模様をよく観ると、タトゥー
を彫ったように怪しげな模様がよくわかる。


▲溺れる者は藁をもつかむの図

▲電車ごっこの図(5頭、6頭が連なっていることもある)


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