frower2013年  11月のフィールドノートから

*11月7日 龍郷町長雲峠
 秋の渡りでヨタカが奄美を通過するのは例年、10月中旬から11月中旬である。今年も10月19日に確認されている。私は全国のバンダーの有志で結成され
たヨタカMLに2010年より加入しており、いつかヨタカを捕獲してみたいと思いつつ、ここまで1羽も捕まえられずに4年めとなっている。
 6日の夜、道路におりたヨタカを観たので、夕刻から捕獲を試みる。牧場の横の草地にCTXを2枚張り、誘引のためにMDで声を流す。月齢は3.6で闇は濃く、
風もない。絶好の捕獲日和ではないかと勝手に信じこみ、1時間ほど周囲の林道でナイトウォッチングをして時間をつぶす。リュウキュウコノハズクとアマミヤマ
シギを観察して網場に戻ってみると、網になにか翼の長い鳥がかかっているのが、シルエットで確認できた。4年目にしてようやくゲット!と、小躍りしながら網に
近づいてかかった鳥の正体を知り、へなへなと腰が砕けそうになる。いや、これはこれで嬉しいんだけど、ヨタカの道はまだまだ遠い。


▲網にかかっていたのはアオバズクでしたとさ。


*11月15日 瀬戸内町勝浦
 アマミヤマシギの行動を調べるために仕掛けている自動撮影カメラのバッテリーとメディアの交換にいったところ、耳元で嫌な羽音がした。姿を観るまでもなく
羽音の主はコガタスズメバチだとわかる。怒らせると厄介なので、そっとあとずさりどこにいるかと目を凝らすと、なんとヤッコソウから吸蜜しているではないか。
昨年森林総研の小高さんがヤッコソウに自動カメラをしかけ、ヒヨドリ、メジロ、ウグイスが吸蜜に来ていることが確認されたが、変温動物は写らないので昆虫
の種類まではわからなかった。そうか、スズメバチもやってくるのね。
 作業を終えて車に戻ると、ボディにアマミモリバッタが一頭しがみついている。つるつるの車体に懸命にしがみつく姿がけなげというかいじらしいというか。しか
し、こんなところに捕まっていてもなんの得にもならないので、近くのススキの葉に移してやりました。


▲ヤッコソウから吸蜜するコガタスズメバチ。


▲ジムニーのボディーでフライクライミングするアマミモリバッタ。


*11月17日 大和村フォレストポリス
 フォレストポリスにシラガホオジロのオスが出たという情報をいただき、さっそく出かけてみた。これまで奄美ではシラガホオジロを二度観ているが、いずれも
メスだった。今度の個体はきれいなオスだというので期待が膨らむ。件の個体はすぐに発見できた。聞いた通り、グラウンドの真ん中でさかんに餌を探していた
のだ。ちょっと遠いがしかたない。双眼鏡で観察したあとビデオカメラで撮影を始めると、なにやら別の鳥がもう1羽。フレームに入ってきた。タヒバリかと思った
が違う。再び双眼鏡のピントを合わせると、なんとヒメコウテンシではないか。シラガホオジロとヒメコウテンシのツーショット。なかなか贅沢な光景を堪能するこ
とができた。


▲グラウンドに降りて餌を探すシラガホオジロのオス。この個体を観察していると……


▲……ヒメコウテンシがよりそうように近づいてきたのであった。

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