第23回オオトラツグミ一斉調査について
〜奄美中央林道で初めて100羽を超え、北部・市理原でも確認〜

 昨年の調査に引き続き、奄美中央林道を中心とした一斉調査とその他の補足調査はこれまでの主要林道に限
定しつつ、新たに周辺地域の一部を加えた調査を行いました。調査林道を限定したのは、奄美野鳥の会の会員
をはじめとする調査員の負担を勘案したうえでの、オオトラツグミの個体数モニタリングの精度を維持しながら、
同時期に集中する他の野鳥調査も実施していくための措置です。周辺地域の調査を加えたのは、今後の生息域
拡大を見越しての対策で、龍郷町の市理原地区、笠利町の喜瀬地区、土浜地区、さらに昨年同様に加計呂麻島
の一部も調査しました。
 今年のオオトラツグミ一斉調査は3月20日(日)に奄美中央林道全域やスタルマタ林道、住用ダム線、油井岳林
道などで実施しました。一斉調査の一日だけで133名の方々の参加をいただき、3月19日(土)の補足調査に参加
された45名を合わせると、合計で延べ178名の方々にヴォランティアとして参加いただきました。この二日間の調査
の結果、オオトラツグミのさえずり個体数191羽(うち奄美中央林道は106羽)を確認することができました。
 今年の一斉調査と補足調査(ICレコーダーにより調査を含む)を合わせたさえずり個体総数は、昨年の314羽(調
査地点数187)よりも多い、346羽(調査地点数193)を記録しました。今年は調査地点が昨年よりも6地点多く、個体
総数ほ昨年より32羽多くなりました。
 1994年に開始して以来毎年実施してきたオオトラツグミさえずり調査ですが、奄美中央林道ではこれまで23年間
の継続調査で最も多い個体数106羽を記録し、はじめて100羽を超えました。また、これまで生息が確認されていな
かった北部の市理原地区で初めて2羽のさえずりが確認されました。長年の継続調査で増加傾向がはっきりし、北
部地域に生息域を広げつつあることもますます明らかになってきました。これも長年にわたって、多くのみなさま方
のご協力ご理解があってのことであり、ヴォランティア調査員として調査に参加されたみなさま、ご支援をいただき
ました行政や諸団体および個人の方々、調査資金にご寄付いただいたみなさま方に対し、改めて心から深く感謝
いたします。
 ご支援、ご協力ありがとうございました。

                              特定非営利活動法人 奄美野鳥の会
                                        オオトラツグミさえずり一斉調査実行委員会


●2016年(第23回)オオトラツグミさえずり個体調査結果

調査地   193箇所
確認羽数  346羽
調査員   294人(延べ人数)


●オオトラツグミのさえずり個体のセンサス結果の推移

奄美中央林道 その他 合 計
1990 24羽 1羽 25羽
1994 40羽 14羽 54羽
1995 18羽 14羽 32羽
1996 18羽 11羽 29羽
1997 27羽 14羽 41羽
1998 21羽 17羽 38羽
1999  調査方法変更 28羽 72羽
44羽
2000 25羽 36羽 61羽
2001 40羽 34羽 74羽
2002 40羽 37羽 77羽
2003 43羽 61羽 104羽
2004 42羽 84羽 126羽
2005 68羽 103羽 171羽
2006 47羽 118羽 165羽
2007 78羽 171羽 249羽
2008 47羽 180羽 227羽
2009 51羽 225羽 276羽
2010 32羽 262羽 294羽
2011 45羽 288羽 333羽
 2012  59羽   296羽  355羽 
 2013 96羽   426羽 522羽 
 2014  85羽  調査方法変更 
215羽  300羽 
2015  73羽 241羽   314羽
2016  106羽   230羽 346羽 

「奄美中央林道」は、里林道、金作原林道を含む奄美市里(始点)から宇検村大畑出口(終点)までをいい、ルートセンサスによる調査。
1998年までは数日かけて調査をおこなったが、1999年以降は同日に一度で調査を行っている。
「その他」は、1990年と1996年は任意観察のみであるが、1994年と1995年、1997年以降は定点観察も行なった。1994年、1995年、1997年
以降に比べて、1996年の観察地点はかなり少なく、見落としが多い。2014年以降、奄美中央林道と一部の林道のみにしぼって調査。
*表は、Strix vol.15.1997「.オオトラツグミのさえずり個体のセンサス結果(1996年春)奄美野鳥の会」に1997年以降の結果を加えて作成。



 奄美中央林道での調査では、昨年より33羽も多い106羽を記録し、これまでの調査で最も多く、
初めて100羽を超えた。全調査地域(地点数)では、昨年の187地点よりも6地点多い193地点で調
査し、全体で346個体となった。また、これまで一度も確認されていなかった北部の市理原地区で、
初めて2羽のさえずりが確認された。今回の調査で、個体数の増加傾向と北部への生息域の拡大
がますます明らかになってきた。


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