オオトラツグミ一斉調査にご協力
いただき、ありがとうございました。

  一斉調査実施日:2012年3月18日(日)

 地球上の奄美大島のみに生息し、絶滅危惧種で国の天然記念物に指定されている
野鳥・オオトラツグミの生息状況を把握し、その繁殖個体数の増減を記録しておく
ため、奄美野鳥の会では毎年3月にさえずり個体の一斉調査を行ってきました。1994
念から開始して以来毎年実施し、今年で19回目になります。
 この一斉調査は、オオトラツグミがさえずる夜明け前の薄暗い時間帯に、林道
を歩きながら、さえずりを地図に記録していくもので、調査はデータの精度を高め
るために短時間に多くの調査員の参加を必要とするものです。
  今年は一斉調査を3月18日(日)に行い、その前後の補足調査を3月17日(土)、
20日(祝)に行いました。今年の一斉調査は、奄美中央林道が一昨年、昨年と集中
豪雨によって生じた崖崩れ箇所がそのまま残り、まだ車が通行できないままになっ
ていました。そうした調査地では、安全のためベテランの調査員が調査地点まで歩
いて行って調査を行いました。なお、一斉調査で把握できなかった地域につきまし
ては、3月から4月中旬頃まで順次奄美野鳥の会の会員を中心に、できるだけ多くの
地域で補足追加調査を行ってきました。
 今年のオオトラツグミ調査では、3月18日(日)に奄美中央林道全域や油井岳林道、
住用ダム線などを含む一斉調査に114名の方々が参加し、3月17日(土)、20日(祝)
の補足調査には、合計で40名の方々がボランティア調査員としてご参加をいただき
ました。これら3日間の調査の合計では、延べ154名のボランティア調査員の方々に
参加していただき、133羽(うち奄美中央林道は、59羽)のさえずり個体数を確認す
ることができました。
 全ての補足追加調査を含めた3月から4月下旬までの調査全体では、総計でさえず
り個体数が昨年(333羽)より22羽多い355羽となり、これまでの続けてきた調査で
最も多い確認数となりました。また、調査地点の総数は、昨年(283地点)より47
地点も多い330地点(ICレコーダーによる20地点含む)となりました。延べボラン
ティア調査員の総数は昨年(375名)より9名多い384名でした。
 今年も引き続き、環境省那覇自然環境事務所や鹿児島森林管理署、鹿児島県大島
支庁林務水産課・奄美市・大和村・宇検村・瀬戸内町のご後援をいただくことがで
きました。また調査員説明会の会場として奄美博物館と瀬戸内町立図書館・郷土館
を使用させていただきました。
 ボランティア調査員として調査に参加されたみなさん、ご支援をいただきました
行政や諸団体、個人の方々、調査資金にご寄付いただいたみなさま方に対し、改め
て心から深く感謝致します。ご支援、ご協力ありがとうございました。

           特定非営利活動法人 奄美野鳥の会 
           オオトラツグミさえずり一斉調査実行委員長 高 美喜男


●第19回(2012年)オオトラツグミさえずり調査結果

調査地   330箇所
確認羽数  355羽
調査期間  2012年3月1日〜2012年4月24日
調査員   384人(延べ人数)


●オオトラツグミのさえずり個体のセンサス結果の推移

奄美中央林道 その他 合 計
1990 24羽 1羽 25羽
1994 40羽 14羽 54羽
1995 18羽 14羽 32羽
1996 18羽 11羽 29羽
1997 27羽 14羽 41羽
1998 21羽 17羽 38羽
1999 44羽 28羽 72羽
2000 25羽 36羽 61羽
2001 40羽 34羽 74羽
2002 40羽 37羽 77羽
2003 43羽 61羽 104羽
2004 42羽 84羽 126羽
2005 68羽 103羽 171羽
2006 47羽 118羽 165羽
2007 78羽 171羽 249羽
2008 47羽 180羽 227羽
2009 51羽 225羽 276羽
2010 32羽 262羽 294羽
2011 45羽 288羽 333羽
2012  59羽  296羽  355羽 

*「その他の観察」は、1990年と1996年は任意観察のみであるが、1994年と1995年、および1997年以降は定点
観察も行なった。1994年、1995年、1997年以降に比べて、1996年の観察地点はかなり少なく、見落としが多い。
(1990-1995は、石田ほか1995から抜粋)
 1998年以前は奄美中央林道の里・金作原地区と神屋地区のみの調査であったが、1999年以降は奄美中央林
道全域を調査した。
 その他の場所は年々観察地点が増えているため、個体数が増えている。

*表は、Strix vol.15.1997.『オオトラツグミのさえずり個体のセンサス結果(1996年春)奄美野鳥の会』に1997年
以降の調査結果を加えて作成。


 今年の奄美大島全域のさえずり確認個体数は355羽で、昨年(333羽)より22羽多く、これ
までの最も多い記録となりました。特に調査地域(地点数)は飛躍的に増え、これまで最も
多かった昨年(283地点)より47地点も多い330地点(ICレコーダーによる20地点含む)とな
りました。このように、昨年より調査地域がさらに広がったことによって、全体としての個体
数が増加した面があります。昨年と同じ調査地点でみると、ほぼ昨年並みの記録の地点が
多くみられました。
 2001年以降、毎年同じ調査地点(42地点)で調査を継続している奄美中央林道(約42km)
では、昨年(45羽)より14羽多い59羽の個体数を記録しました。これは、過去最高の2007
年(78羽)、2005年(68羽)に次ぐ3番目に多い記録です。
 最近まで記録がなかった龍郷町秋名林道では、昨年まで2年連続で2個体が確認されてい
たものの、今年は1個体の確認に終わりました。集中豪雨によって秋名林道では多くの崖崩
れが発生していて、充分な調査ができなかったことも一因と思われます。なお、今年は秋名
林道よりさらに北部の龍郷町瀬留で1個体が記録され、オオトラツグミの生息域が一層北側
に広がっていることが確認されました。