新南島通信は、奄美に関する様々な書籍・文献等から印象的文章をピックアップして紹介します。 ●bP 不思議な魅力を持つ島の風土記 椋鳩十 奄美風土記の前文より ●bQ リュウキュウイノシシに出会いました ●bR 島口(奄美の方言)入門その1−あなたもシマンチュに− ●bS 島口(奄美の方言)入門その2−トン普通語について− ●bT 島口(あまみの方言)入門その3−【…ち】(トン普通語)− |
bU | 島口(奄美の方言)入門その4−【だから、何ち?】(トン普通語)− | |
●【だから、何ち?】だから、なんち?(トン普通語) 「だから何だ」「だからどうした」「それだからどうなんだ」「結局、どういうことなのだ」「いったい君は何を言わんとしておるのだ」といった意味。 「だから」は助動詞「だ」に、助詞「から」の付いたものが自立語化した接続詞。 「なん」は代名詞「(なに)」が変化した語。「ち」はトン普通語特有の言い方で、共通語の助動詞「だ」に当たるだろうか。 共通語の「なんだ」は連語として、 @事物・目的などの不明なさまを表す A直接言うのがははかられるときなどに漠然と言う B問題とするに値しない判断を表す−ときに用いる。また感動詞として、 C相手の言語、行動をとがめ、またはそれに反発する気持ちを表す D予想外の事態に驚きの気持ちを表す E指示すべき判断、意思がうまく言えない−ときに発する。 「だから、何ち?」はBとCの意味合いが強いようだ。相手が問いかけたことに対して、「それがどうしたというのだ、大したことではないではないか」とか、「結局、何を言いたいのか、言いたいことがあるのなら早く言え」とか」「私に何をしろと言うのか、私は知らんぞ」というような意味が込められている。 相手の気持ちや言葉をさえぎり、軽く反発する感情が入る。ぞして冷たい視線で「だから、何ち?」と言うと、相手に二の句を告げさせない拒絶の姿勢を表現することになる。 夏目漱石の『行人』に「自分は奥歯に物のはさまったような兄の説明を聞いて、畢竟(ひっきょう)それがどうしたのだという気を起こした」という一節がある。私は「だから、何ち?」に通じる感情を読み取った。 〈用例〉 上司「今度の日曜、仕事の依頼が入ったんだけどなぁ」 部下「だから、何ち?」 |
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南海日日新聞社:奄美ゆむぐち辞典 出典 | ||
トン普通語処方箋−シマの標準語をすっきりさせる法−倉井 則雄著 参照 | ||