bP.正月に門松を立てるのは
bQ.鶏になったうそつきの占い者
bR.湯湾大親(ゆわんふうや)の父子
bS.龍郷での平家落人の悲劇
bT.殿様をやりこめる炊事係
bU.豪傑太郎はケンムンの声を聞けた
bV.恋仲を引き裂かれた美人娘
bW.為朝の子、親に似た力持ち

bX もとは人間だった奄美の妖怪
瀬戸内町 ケンムン話
 奄美諸島の本島と徳之島には、ケンムン(妖怪)がいる。カッパや沖縄のキジムナーなどと共通したところや違いもあるが、不思議な面が多い。もとは、人間だったということだ。

 二組の夫婦がいた。一方の妻が美人だったので、もう一人の男がほれた。ある夜、男二人はタコ捕りに出た。美人の妻にほれた男がもう一人に、「舟の下にタコがいるから捕って来い。」と言って舟から飛び込ませ、舟の上から銛で突いて殺した。

 家へ帰って来た男は、その美人妻に、「君の夫はタコに引き込まれて死んだ。」と言った。そして、自分の妻になれと言った。すると、美人は、「自分の言う通りにすれば妻になってやる。一人で抱えられる木を探しに山を歩こう。」と誘った。二人が山を歩いていると、やがてその男が一人で抱きかかえられる木を探し当てた。「ちょうどいい木がみつかった。抱えてみてね。」と甘い言葉で男に木を抱かせて後ろに回ると、男の手をにぎりながら、すばやく男の手へ五寸釘を打ち込んで殺したその男の死霊がケンムンになったと言われている。

 ところで、ケンムンの姿は、髪は灰色をして、眼も耳も眉もなく、猿のように鼻と頬を赤くして、盛んに、木の枝にぶら下がって、機械体操のようなしぐさをしているという。ある人が冬で、ガジユマルの木の枝を山羊の餌に切ろうとしたら、木の枝がタラタラ鳴るので見たら、ケンムンだったという。

 次はケンムンと相撲の話をする。ある人が春の潮干狩りの季節に浜に下りると、子供のような小さな者たちが動き回っていた。初めは子供と思って「相撲をとろう。」と声をかけた。相手は承知したように身構えた。つかまえて投げ飛ばしたと思ったら、逆に自分がふっとんでいた。何度も何度も投げたが、そのたびに自分が投げ倒され、体中血だらけになったという。
(原話『瀬戸内町の昔話』)

 ケンムンについては、まだわからないことが多いが、奄美を代表する興味深い妖怪である。その語源については怪のもの説や木の精説などがある。

ケンムンはうっそうと茂るガジュマルの木などに住んでいます。
   
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