bP.正月に門松を立てるのは
bQ.鶏になったうそつきの占い者
bR.湯湾大親(ゆわんふうや)の父子
bS.龍郷での平家落人の悲劇
bT.殿様をやりこめる炊事係

bU 豪傑太郎はケンムンの声を聞けた
住用村 運定めの話
 住用村の石原に太郎という人がいた。豪傑で、神の生まれ(霊性が高い)と言われていた。嫁さんがいて、妊娠しており、産月で予定日も近いのに、毎晩のように投網漁に出ていた。長浜で潮待ちに、流木を枕にうたた寝をしていた。「おいおい起きろ、君の妻は子を産んだが、イヤンハジ(矢筈やはず=運命)を私が差したが。」とケンムン(妖怪)が来て言った。「何と運命を定めたか。」「女の子を産んだが、その子はキュラムン(美人)になる。年頃になると須垂(すたる)の東仲間からもらいに来る。君がくれる(嫁に出す)と、午前中は上天気だが、12時から先は嫁入りする途中で雨風の吹く天気になり、雨宿りに立枯の木の下へ入りこむと、その木が倒れて打ち殺されるとイヤンハジを差した。」
 太郎は「えー。」とだけ、返事をした。帰ってみると女の子が生まれていた。それから18年間は何ごともなくすくすく育った。
 東仲間から嫁にもらいに来たのでくれた。家でお祝いなどして送っていくことになった。嫁入りでは親は送らない習慣だが、太郎は自分も絶対に送ると行列に参加した。
 三太郎坂を登って峠を越えて、東仲間が眼下に見えるところまで来たとき、にわか雨が降りだし、風も出てきた。行列は急いだのに、娘が立枯れ木の下へ走り込もうとした。太郎が後を追ったら枯れ木がハラハラ音をたてだしたので、娘をつかんで投げた。「やーれやれ。今日こそ本当に自分の子になったが。さあーこれから先は皆さんが連れて行き、幸福に暮らせるようにしてください。お祝いをしましょう」とその行列と別れた。
 太郎は家に帰って来て、18年間も心の中にしまってあった話をした。
 この石原太郎の話から、子供が生まれそうになると、父親は金切れでも木切れでも置き、生まれると、「くんくわぬ ヤンハジや わんどう さしゆる。」(この子の矢筈は私が差す)と言うようになった。
 (原話『吉永イクマツ媼昔話集』)

 太郎は十人力以上で三反歩の田んぼを一日で耕した。一反を耕すと一升の飯を食べたという。
住用村の地図   三太郎峠のスタルマタ農道より宇検方面を望む 
三太郎峠−スタルマタ農道より宇検方面−  三太郎峠のヒカゲヘゴ  マングローブ
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