bP.正月に門松を立てるのは
bQ.鶏になったうそつきの占い者
bR.湯湾大親(ゆわんふうや)の父子
bS.龍郷での平家落人の悲劇

bT 殿さまをやりこめる炊事係
大和村 打(う)たん太鼓の鳴る太鼓
 お初の飯は、必ず神さまにあげる炊事係の男がいた。ある日、殿さまが、「金の釜で炊いた御飯を自分で食べてからあげてみたい。」と言ったが、男は反対した。すると、それなら暇をだそうということになった。
 「残念、ほかに技もない。何で食べていくかい。」男は村の入口で草鞋(わらじ)を作り、生米を食ベ、小屋で暮らしていた。ある夜、美しい女がやって来て、「どうか、宿を貸してたぼらん(くれませんか)。」「あい(いや)、きたないので休まれません。」「どうか、休ませてください。」
 仕方なく宿を貸したら、結婚してくれ、食べるのは自分で作ると言うので、二人で暮らしていた。
 そのうちに殿さまが、美女に、「殿さまのところに来い。」と、命令したが、妻はいかない。男を呼び出して、「自分が言いつけるのを聞かないと妻を取るぞ。灰縄(あくじな)を持って来い。」そんなのはできない。心配して帰り、妻に話すと、「そんことは簡単だ。明日持って行きなさい。」と、縄を板の上に巻いたまま置き、炭火をつけた。「灰縄です」と差し出すと、「これだけではだめだ。次は、打たん太鼓で鳴る太鼓を持って来い。」と言う。ああ今度こそ妻を取られると思い、帰ると、「そんなことは簡単だ。袋を持って行き、それにクマバチの巣を包んで来なさい。」
 そして、太鼓をはらせ、中にクマバチを入れた。「打たん太鼓の鳴る太鼓を持って来た。」「もう一つだ。どんな寒い日でもどんな暑い日でも肌持ちのよい扇を持って来い。できないとお前の妻を取るぞ。」と言う。世の中にそんな便利なのがあるかと男はしおれて帰って来た。すると、「その扇は私が持っている。これを持って行き、殿さまが『どんな扇か』とあおぐ、その時『あおげ、あおげ』と言うと気持ちよく吹き飛ばされ、一人も残らなくなる。あなたは普通の人間を妻にして栄えて暮らしなさい。私は供えた初を食べた神さまです。」美女の妻はこう言って消えた。御飯の初を供えるというのにはこういう話がある。
 (原話『福島ナヲマツ昔話集』)
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