坊津の十五夜は、郷土の先輩たちが脈々と伝承して来た伝統的な行事で、大別して5つの型が存在しています。
 
代表的なものは、①栗野・清原に見られる農村の型 ②鳥越・上之坊に見られる特殊な型 ③坊・久志に見られる浜の型 ④泊の型 ⑤秋目の型 となります。
 
十五夜の夜は、それぞれの家の庭先や縁側に臼を出し、その上に箕(みの)を敷き、一升枡(いっしょうます)などに里芋、薩摩芋(からいも)を盛り付け、すすき、秋の草花と団子を供えて飾ります。
 
それぞれの地区の十五夜の中心は、綱引き、夜相撲ですが、②鳥越・上之坊地区の「火とぼし、口説き(唄)」 ④泊地区の「宮参り、辻廻り、十五夜踊り、踊りこわし」 など、それぞれの地区の伝承で風変りな行事が、溢れるように短期間で集中的に行われます。
 
しかし、時代の流れの中で、十五夜行事の中心的存在であった青年層が減少し、以前ほどの賑わいも少なくなり、内容も簡素化されつつ、有志の方々を中心に公民館活動の中にひたむきに取り込み、伝承している地区もあります。
 
坊津の各地区の十五夜行事が、いつまでも、それぞれの区民の方々の手で守られ、引き継がれることを心から祈りたいと思います。
 
尚、坊津町の十五夜行事は、昭和56年1月28日、国指定の重要無形民俗文化財「南薩摩の十五夜行事」として指定を受け、保存・伝承されています。 詳しくは、以下をご覧ください。
 

〔お月様づくり〕
〔茅引き〕
〔火とぼし〕
〔※※※〕
 
◆火とぼしの背景(由来)
茅引きの終了後に行うセレモニーです。 場所は、部落の上手「上道の坂=かんみっのさか」で行われ、部落民に対して十五夜の一連の行事をお知らせするためのイベントと思われます。
◆お月様づくりとは・・
小さく編んだ綱(小まいけ)を3本繋いで大きな輪を作り、中天にある満月のお月様をこの輪の中に呼び込む、神妙なセレモニーに供するものです。 昔は真夜中に行われていたとか・・
◆茅引き
子供たちが背負っているカズラは、周辺の野山で根っこから引き抜いた茅の束です。 綱の材料などに利用されます。

〔綱練り〕
 
〔宮参り〕
〔辻廻り・十五夜踊り・踊りこわし〕
〔十五夜相撲〕
 
◆辻廻り
部落の全域を十五夜歌を歌いながら巡廻する行事です。 意義としては、参加する子供達への声掛けと部落民への周知を目的としています。
◆十五夜踊り
お月様への無病息災・豊漁豊作への感謝の奉納、並びに沢山の参加者への披露を意味しているものと思われます。
◆踊りこわし
辻廻りのグループに対して、奇襲の様に踊りの輪の中に駆け込み、静かな雰囲気を一時、騒然とさせるセレモニーです。 昔は、男女が触れ合う場がなく、貴重な風習であったと古老から聞かされました。

〔綱練り〕
 
〔ヨメジョ〕
〔手つなご〕
〔どんとせ〕
◆ヨメジョ・手つなご・どんとせの意義
これら一連の行事は、茅引き行事の終了後、集落の入口付近で行うもので、カメラマンには、かなり人気のあるセレモニーです。
ヨメジュは、ずばり女性を表します。 野山から茅などの収穫後、タイマツの先導でこれを担いで下りて来る様は、まさに昔は男女の触れ合う場がなく、貴重な風習であったとの話は、ここでも同様でしょうか。
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