本因坊秀策には僕も囲碁を覚えたての頃から憧れたものだ。
秀策の生涯を通じての好敵手は、太田雄蔵である。 若き秀策が八年がかりで互先に追いつき、まったく 成績互角のうちに、両者が死力をつくした三十番碁 が開始された。 きっかけは高名な碁打ちの集まりの席で、誰が今、 一番強いか話題になり、算知、松和、仙得、正徹らが 「秀策が当代の最強者」というと、雄蔵が、「わたしゃ なんともいえませんね」だってようやく秀策は互先に なったばかり。ごもっともな話。