こちらへどうぞ "象のオリ"

 防衛庁が五年前から鹿児島県・喜界島に建設を計画している "象のオリ" と呼ばれる最新鋭の通信傍受施設は、予定地区の激しい反対で難航しているが、別の地区が九割以上の住民の署名を集め、誘致を働きかけていることが八日までに分かった。建設に反対している「喜界島の豊かな自然と平和を守る町民会議」(丸山邦明議長)は同日夕から「断固阻止しよう」と街宣活動を開始。奄美地区労とも連携して反対運動を強化する方針だ。(喜界島)

他地区からラブコール

   油断!? 反対地区、運動強化

 喜界島には、わが国周辺の軍事情報を電波で収集、整理分析する喜界島通信所があるが、防衛庁は老朽化したため象のオリ(高さ40メートルの鉄塔約40本を遠景に並べた施設)の建設を計画。1986ごろ、喜界町の承認を求め、同町議会も誘致を決議した。しかし、建設予定地句の赤連地区住民の一部地主らが反対して用地買収は難航している。
 新たに誘致を名乗り出たのは同じ島内の川嶺地区。「『赤連』の候補地は全員の同意が得られず見通しは困難と聞いているが、私たちが要望する諸施策を防衛庁が実施してくれることを条件に、アンテナ施設用地の川嶺地区への誘致を防衛庁に働きかけて欲しい」との要望書を区長を通じて町に提出。「誘致が実現したら所有地を賃貸する用意がある」との誓約書もつけた。
 伊地知司・同区長によると、集落の約百戸のうち署名に反対したのは三人だけで、「防衛庁からも町からも働きかけはなく、住民の希望だ。条件は水道整備」と話している。
 しかし、署名を拒否した住民によると、先月中ごろ集会があり、役場から取り寄せた資料で各自の所有地の面積などを確認後、署名を求められた。欠席した人の署名も二時間後には集めた、という。「誘致予定地の山林は集落水源かん養林の役目も果たしており、施設建設のため切り崩されては元も子もなくなる」と話している。
 一方、町民会議の丸山議長は「奄美の歴史に残る重大な戦いを展開する」と、街頭宣伝活動をはじめ幅広い運動に取り組むことにしている。
1991年08月10日、毎日新聞記事より