「象のオリ」川嶺地区が動く

 防衛庁が自衛隊喜界島通信所で進めている最新鋭通信傍受施設「象のオリ」建設計画は予定地の赤連地区の一部農民の根強い反発で用地取得が難航しているが、同町川嶺地区の住民が「象のオリ」誘致を防衛庁に働きかけるための署名運動を展開していたことが七日までに分かった。これに対して、建設反対運動を進めている「喜界島の豊かな自然と平和を守る町民会議」(丸山邦明議長)は七日夕方から町内を街宣して事態を報告。「奄美の歴史に残る重大な戦い。象のオリ建設は断固阻止しよう」などと訴えた。(喜界)

署名運動を展開

   反対派が重視、阻止訴え

 関係者の話をまとめると、先月中旬頃川嶺集落の各班の組長らが地区民を集め、「喜界島通信所のアンテナ施設の誘致について(要望)」と題した伊地知司区長あての要望書を示して説明した。
 その内容は「赤連の候補地は全員の同意が得られず見通しは困難と聞いている。ついては、私たちが要望する諸施策を防衛庁が実施してくれることを条件に、アンテナ施設用地の川嶺地区への誘致を防衛庁に働きかけて欲しい」と要望。「誘致が実現した暁には所有地を売り渡す(賃貸する)用意がある」との "誓約" も付け加えている。
 伊地知区長は「署名は住民が自主的に行ったもの。99%の地主が同意している」と話しているが、「内容がよく分からないままに署名なつ印したお年寄りや女性もあった」と指摘する声もある。
 同地区が誘致を考えている場所は中西公園の北側の山林約20ヘクタールで、ほとんどが遊休地。署名に反対した地主の一人は「ただでさえ水が少ないのに、水源地の山林を手放すと影響が大きい。軍事施設のために提供したくもない」と話す。
 これに対して、推進住民側は誘致の交換条件として「水道施設の整備」などを挙げているという。
 「町民会議」はこれらの動きを警戒、七日夕方には早速、町内の街宣活動を展開した。今後は奄美地区労などとも連携して反対運動を強める方針。
 防衛庁福岡防衛施設局。石井貞好広報官の話 現在、赤連地区の未承諾地主の説得に努めているところで、そのような事案は承知していません。 
1991年08月08日、南海日日新聞記事より