「象のオリ」建設反対運動その後

「町民会議」議長 丸山邦明

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 今、喜界島は「象のオリ」建設反対運動の重大な危機を迎えている。
 これまでは「赤連農地を守る会」を中心に、「喜界島の豊かな自然と平和を守る町民会議」(以下「町民会議」と略す)、「奄美の美しい自然と平和を守る郡民会議」、束京・関西の「0TH・象のオリ」を考える会、日本キリスト教団九州教区諸教会等のバックアップにより、“うやふじ(先祖)から受け継いだ土地は一坪たりとも売らないぞ” また“貸さないぞ” との信念のもとに、七年間の長きにわたり、「象のオリ」建設阻止に向けて、反対運動を有利に展開させてきたのである。
 ところが昨年六月、一九九一年原水爆禁止、国民平和大行進鹿児島実行委員会から連絡があり、七月十三日、「象のオリ」建設反対のための平和大行進を現地喜界島において行ないたい旨、「町民会議」宛の連絡を受けとった。それで「農地を守る会」及び「町民会議」は、これを受けとめて七月十三日、赤連公民館においてまず「象のオリ」建設反対のための集会を行ない、それから自衛隊官舎を中心に赤連・湾地区を“「象のオリ」建設反対”、“戦争のための「象のオリ」はいらないぞ”等シュプレヒコールをしながらデモ行進を行なった。
 確かその翌日である。川嶺出身の耕地課長K氏及びI区長が中心になり、川嶺集落の方々を公民館に呼び集め、集落民たちの百之台の遊んでいる土地が高値で売れること、また「象のオリ」建設を行なう条件として、川嶺集落のみんなが日頃大変悩まされている水道施設を、防衛庁側に設置していただく旨の説明があり、集落民はこれ幸いと喜んでその案に賛成致し、数日のうちに90%以上の賛成署名を確保したとのことである(資料12
 そこで「町民会議」並びに「農地を守る会」の役員たちが集まり、協議の結果まず、事の真相を確かめる意味で区長宅や反対をして頑張っておられるT氏宅を訪間した。そして私たちは「象のオリ」の危険性、湾岸戦争によってまず真先に攻撃目標とされたのが通信施設であり「象のオリ」は核戦争を想定した最新鋭の通信施設であること、若しこれを建設させたならぼ、次々と関連施設ができ沖縄につぐ基地の島になってしまう。そして、この問題は島の将来にかかわる大事な問題である旨を強く訴えたにもかかわらず、I区長の態度は変らず、「象のオリ」建設賛成の意志を表明し続けたのである。しかも「象のオリ」の件が、一議員や耕地課長等のさしがねによる策略であることが判明した。
 それで早速、「町民会議」並びに「農地を守る会」の役員会を持ち、今後の対策を協議致し、とにかくまず川嶺集落の人々に、「象のオリ」の何たるかを知ってもらうためにチラ紙を全戸に配布することと、また一日も早く川嶺集落において大会及びデモ行進を行なうことを決議した。チラ紙を二回にわたり八月〜九月にかけて配布(資料4-14-25)すると共に、宣伝カーによる訴えをも行なったのである。しかし九月の定例議会においては、川嶺集落から出された「象のオリ」建設の誘致願いの請願書が決議された。(資料3
 それで計画中であった川嶺集落における「象のオリ」建設反対の集会及びデモ行進を、「町民会議」並びに「農地を守る会」が中心となり、奄美地区労の応援を受けて、二〇〇名程の参加者を得て、盛大に行なった(資料6)。その際、束京の「OTH・象のオリを考える会」から激励の電報とカンパが届き大いに励まされた。その後、川嶺集落の方々から防衛庁側に早く「象のオリ」建設についての説明会をして欲しいとの要望が行なわれた際、防衛庁側とLては、集落民百%の承諾が得られない限り説明会には応じないとの解答があった。そこで、川嶺集落の青壮年達は、年内に何とか解決をつけるべく反対者三名の方々の説得に三十数名の人々が一軒一軒徒党を組んで迫まり、人権躁騒もはなはだしい対応の仕カで、ついにY氏及びM氏(元教育長)は、やむをえず承諾せざるを得なかったようである。また同じような態度で、T氏の所に乗り込み、もう反対者はお前一人だ、何とか承諾してくれ、さもなけれぼ水道を止めてしまうぞと威しながら迫ったとのことだが、T氏は「私は赤連の“象のオリ”建設反対のための署名を集めた時、自分が責任者になって行なったので、赤連での“象のオリ”建設には反対の意志表示をし、川嶺集絡では賛成をするというようないいかげんな態度をとるわけにはいかない、そう言う意味で私は他の人々とは立場が違うので絶対に賛成するわけにはいかない」と断固つっぼねたということであった。
 「町民会議」並びに「農地を守る会」の数人で、高山氏宅に励ます意味でお伺いしたのですが、かえってこのような力強い言葉に、むしろ私たちが励まされ意を強くし、これからはT氏を中心として、戦いを進めるべく決意を新たにした次第である。
 折りも折り、タイムリーに、東京の「OTH・象のオリ」を考える会より、「軍事施設“象のオリ”建設反対について」の「お願い」の文章(資料7)が川嶺集絡の全戸に配布され、T氏は勿論のこと私たちも大変励まされた。
 川嶺集落の婦人の方々は、内心では反対の方々が多いと聞かされている。しかし青壮年達がお金に目がくらみ、一時的欲望のためにやっきになっているとの情報を耳にするにつけ、情けなくなります。
 今、世界の動向はソ連・アメリカ共に核軍縮を行ない、平和を指向し、ソ連においては政治的に壊滅的な状況にある。そういう中で日本だけが世界に誇るべき平和憲法を維持していながら、憲法をなしくずしにせんと、PK0法案を国会に提出し、軍事拡大の方向へと進展しつつある。現在、日本は第二次世界大戦において、中国・アジアに対して行なった戦争責任が厳しく問われつゝある。そういう世界的状況の中で、今、喜界島の川嶺集落は「象のオリ」の誘致運動を行ない、議会もこれを承認すると言う、はなはだ恥かしい決議や行動が行なわれている。
 喜界島は今こそ、農業立島で立つか、基地の島となるのか、厳しい危機的状況にある。
 みんなで総力を結集して「象のオリ」建設を阻止しなけれぼなるまい。
 近い将来「町民会議」、「農地を守る会」、「奄美の美しい自然と平和を守る郡民会議」、奄美地区労、そして鹿児島、関西、束京の喜界島出身の皆様方、日本キリスト教団全教会に呼びかけ、一千名集会をと願っている。
WEB master 註1:本稿は「榕樹」第8号(1992年,東京)より転載した。
WEB master 註2:基本的に原文(縦書き)のままであるが、一部人名等はイニシャルに変更した。