訴 状
平成18年7月27日
鹿児島地方裁判所 御 中
原告ら訴訟代理人
弁護士
蔵元 淳
原 告 続 博冶
原 告 内田伸子
原 告 野口英一郎
〒890-0054 鹿児島市荒田2丁目32−21鹿児島県知事公舎
被 告 鹿児島県知事 伊藤 祐一郎
住民訴訟による損害賠償請求事件
訴訟物の価額 金1,600,000円
貼用印紙額 金 13,000円
請求の趣旨
1 被告は伊藤祐一郎に対し金1,140,000,000円及びこれに対する本訴状送達の日の翌日から支払い済みまで年5分の割合による金員の支払いを請求せよ。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
との判決を求める。
請求の原因
第1 当事者
1 原告らは肩書地に居住する住民である。
2 被告は平成16年鹿児島県知事選挙において当選し、鹿児島県知事の地位にあるものである。
第2
1 原告続博治(以下、「原告続」という)及び原告内田伸子(以下、「原告内田」という)は平成18年2月24日付で住民監査請求をなし、同年3月24日付で棄却の決定通知を受けた(原告続及び同内田は決定通知をいずれも平成18年3月28日受領した)。原告続及び同内田は平成18年5月31日付けで新たな住民監査請求をなし、同年6月20日付けで却下の通知を受けた(原告続及び同内田は決定通知をいずれも平成18年6月27日受領した)。
2 原告野口英一郎(以下、「原告野口」という)は平成18年5月31日付で住民監査請求を行い、同年6月20日棄却するとの決定通知を受けた(原告野口は平成18年6月27日に同決定を受領した)。
3 ここで、鹿児島県監査委員(会)は取消訴訟を提起できる処分・裁決をする時は相手側に対して「当該処分・裁決に係る取消訴訟の被告とすべき者」その他を書面で教示しなければならない。教示制度が行政事件訴訟法改正で新設されていたのに、本件においては全く無視するという違法を侵した。
4 上記請求は、鹿児島県が平成18年3月28日に訴外株式会社トーメン不動産(以下、「訴外トーメン不動産」尚、同社は平成18年4月1日付で訴外豊田通商株式会社と合併した)に支払った鹿児島市与次郎2丁目2295ー44約8200平方メートル(以下「本件土地」という)の土地購入代金は、本件土地の購入が公有地の拡大の推進に関する法律(以下、「公拡法」という)に照らして違法であることから、不当な公金の支出に該当すると主張し、本件土地の購入代金金1,140,000,000円を鹿児島県に返還させるための必要な措置を求めたものである。
5 本件土地の購入については、平成18年2月24日に「鹿児島県知事が本件土地を購入しようとする契約行為は不当な公金の支出である」と主張し、「当該行為を防止するために必要な措置」を求める鹿児島県知事措置請求書が提出された。
これに対し、出納室財産管理課を監査の対象機関として監査を実施し、また、総務部財政課及び土木部都市計画課を関係人として調査を実施している。これらに基づき、鹿児島県監査委員(会)は「当該土地の取得は必要な土地を妥当な価格の決定方法で買い取ろうとするものであって、請求の措置請求には理由がない。」との監査結果を平成18年3月28日付鹿児島県広報により公表したところである。
第3 本件支出の違法性
1 鹿児島県は、鹿児島市鴨池新町の本庁舎東側(桜島側)の眺望を確保することを理由に、訴外トーメン不動産の所有する土地に建設予定のマンション建設を阻止することを目的として、本件土地(約8200平方メートル)を土地開発基金をもって購入した。
2 今回の土地購入は、地方公共団体が公共用地を取得する法律である公拡法第6条(土地の買い取り協議)及び同法第9条(先買いに係る土地の管理)に基づき行われた。
3 原告続及び同内田が平成18年2月24日付で行った住民監査請求に対して、鹿児島県監査委員(会)は同年3月24日付で違法性はないと棄却した。
公拡法上の違法性に対しては、「B 公拡法に基づく土地の取得については、地方公共団体が将来必要となると考えられる土地を現実の事業施行前に取得し、その地域の望ましい姿に即して計画的かつ合理的な整備に資するものとされており(公有地拡大推進法詳解:地域政策研究会編集七訂版)、購入時点において、具体的な土地利用計画が十分に整っていないとしても問題にはならないと解されること。」とし、県庁が県民の「統治のシンボル」であり、「文化性を備え、都市環境の向上に寄与し、かつ、県民に親しまれる庁舎」であり、公拡法上の土地の適正運用も「『既に明らかになっている範囲内において、できる限り具体的に』その目的を示すよう求めたものであると解釈される」と解釈し、請求者の監査請求を退けた監査委員(会)は行政を監視する本来の機能を果たしていない。
結果として、「もっと審議を」と望む県民の声は一顧だにされず、拙速に土地の購入は行われた。監査委員が県にお墨付きを与え、その背を押した誤った判断であった。
ここで、原告内田及び同続の請求を棄却した鹿児島県監査委員を例にとれば与党の現職の県会議員が2名、県庁OBが1名、その他1名が就任していた。
尚、鹿児島県監査委員は鹿児島県知事が県議会の同意を得て選任するものである。
昨今報道されている夕張市の例を取るまでもなく、地方税の増税、県営住宅の賃料をはじめとする各種諸費用等の値上げ、各種手続費用の増額、住民サービス及び福祉サービスの切り捨てというかたちで「赤字のつけ」を払わされるのは県民である。
因みに、被告は鹿児島県知事就任後間を置かずして財政危機宣言を為し「鹿児島県は財政再建団体に転落する畏れがある」と鹿児島県の財政危機を鹿児島県民に強く訴えた。
4 公拡法第9条第1項の「先買いに係る土地の管理」には、自治体が買い取った土地の供用制限と管理義務規定が記されている。
また、『公有地拡大推進法詳解:地域政策研究会編集七訂版』には、「相当の公共性、又は公益性を有する目的のために使用する必要があるためにもうけられたものである」と記されている。そこには、道路、公園、駐車場、学校、図書館等具体的な都市施設(公拡法施行令第5条、都市計画法第4条第5項・第11条・第12条、都市計画法施行令第5条・第6条の2)をうたっており、買い取った土地は「買い取りの目的を示し、その土地は原則として買い取りの目的に使用すべきである」と明記されている。
公拡法は、被告の言う「将来世代へ責任」や将来の有効利用、あるいは監査委員会が「既に明らかになっている範囲内において、できる限り具体的に」等を理由として土地の買い取りを許容していないのである。
5 従って、@将来の有効活用の理由付けだけで公共用地の取得は可能であり、A景観の保持は土地の取得以外にないので(被告はマスコミに対するインタビューで景観の保持が理由であると答えている)、B公拡法に基づき具体的な土地利用計画が整っていないが、土地の先買いは可能であるとする鹿児島県の土地購入手続きは明らかに公拡法に抵触する。
6 以上の通り、今回の本件土地の売買は、公拡法に照らして違法であるところ、監査委員(会)の判断には重大な瑕疵がある。
今回の棄却決定は監査委員の職務を自ら放棄し、監査制度を自ら否定するものであり、法律の解釈を誤ったこのような違法、著しく不当な監査請求を適正化するためにも本件監査結果を放置することは許されない。
尚、本件土地売買代金は支払済みである。
7 よって、地方自治法第242条の2第1項4号に基づき被告に対し金1,140,000,000円及び本訴状送達の日の翌日から支払済みまで民事法定利率年分の割合による金員の支払を求める。
証 拠 方 法
追って提出する
添 付 書 類 訴訟委任状 3通