店主のつぶやき あまみ庵の店主:森本が雑誌や新聞に書いた文章を掲載します。

朝日新聞鹿児島版:みなみ歳時記(H9.1.30)

『土建列島』

「国土破壊する(公共投資)」

奄美群島固有の豊かな自然と社会がこのところ加速度的に崩壊している。鹿児島全域も同じ状況だろうか。奄美の日本復帰から名前を変えて続く「奄美群島振興開発事業」。四十数年間で一兆円以上の総事業費は、結局だれのための投資なのか。

経済大国の中の不安で貧しい生活感。何かおかしいと考えていたら、日本の豊かな風土をいびつに動かしている背後霊たちの陰謀が見えてきた。

「日米構造協議」と財界の要請を受けて、一九九〇年六月二十八日夜、時の海部政権(橋本大蔵大臣、小沢自民党幹事長などの旧田中軍団)は「公共投資基本計画」を閣議決定した。知らぬはカヤの外の国民ばかり。

九一年度から十年間の公共投資の総額を四百三十兆円と定めた。八一年度から十年間の実績の約二倍という。驚くのはまだ早い。「政府は七日の閣議で、一九九五年度から十年間の公共投資の総額を六百三十兆円とする、新しい公共投資基本計画を決定する。『九一年度から十年間に四百三十兆円』とした現計画を拡大するが、数字は従来の枠組みの延長で決めただけ。国際的に割高な公共投資のコスト低減、個々の事業の必要性や優先度の点検、それに応じた予算の重点配分の実現、国と地方自治体、受益者である個人の分担はどうするかなど、検討する課題は積み残したままだ」(朝日新聞九四年十月七日付)そして、ついには「政府の一九九六年度の建設投資見通しによると、公共、民間合わせたその総額は前年比一・八%増の八十一兆八千四百億円」(日本経済新聞九六年六月六日付)という怪物的な顔がでる。

世界第二位ともいわれる軍事大国日本の軍事費ですら年間五兆円だ。十年間継続しても五十兆円。建設費はその十倍以上。とにかく異常だ。この国のすみずみにまで巣くう「政官産学」の寄生複合体は、いまだに「治山治水」「内需拡大」「○×改革」という錦の御旗を掲げて、日本公共工事列島のあらゆる山河、農地、都市、海浜を戦場に末期的な土建屋戦争を遂行しているのだ。

日本の九六年度の国債、地方債などの国民の借金の総額は世界一で実に四百四十二兆円だ。それを大蔵省はインターネット上で「公債残高の急増」として「平成九年度には二百五十四兆円、国民一人当たり約八百七万円です」と警告している。

「バカにしないでよ そっちのせいよ ちょっと待って!」百恵ちゃんでなくても怒るぜ。

今後も増税と国民の生活、福祉、教育の予算を切り捨てて、政官産学の癒着構造を解体できない本末転倒型の土建国家日本。自業自得の財政危機宣言と株暴落の「禁治産国日本」の放蕩(ほうとう)息子たち。

後見人のぼくら納税者は、何よりも放蕩の元凶の「公共投資基本計画」を即時凍結するよう宣言する。


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