今月の一押し

[2000.06]

『奄美AMAMI大古のささやき』

 濱田康作著
 毎日新聞社・2000年四月発行
 125頁・2400円

 濱田康作・五冊目の写真集。この人の作品は、一幅の墨絵のおもむきがある。風景や生物たちの切り取りかたが、絵葉書や西洋画とちがって、雲や海や山林に見られるボカシやユラギまでも封印しようとしているからだろうか。陰と陽、聖と俗、正と負……という二面性ではなく、そこの間(愛だ)や、それらを全部ふくんだような全体性に接しようとしているからだろうか。ここには、濱田康作というシマンチュの心性が、120枚ほどの写真になってただよっている。私のシマの土盛海岸が、最初と最後のあたりに8枚も編集されているのもこれまたグーとする要因だ。

 「生きものたちの小宇宙―この南海の楽園には、大古の昔から奇跡的に生き残った多くの動植物が生息する。彼らを育んだのは、すべてが完結するこの島の環境である。
 奄美の森に入って18年余り、島で暮らし、その自然の美しさに魅せられた写真家が目撃した"生きものたちの小宇宙"。」(帯より)
  

(本処あまみ庵代表:森本眞一郎)


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