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土石流災害に思うこと (7)

No.218(2018.09.19)


地籍調査が完了して山林の所有者が確定したからといって、山林の現況になんら変化はありません。

今現在も植えっ放しで管理放棄された山林の方が多いと推察しています。

稀に数十年ごとに木を切り出して再び苗木を植えるという管理の行き届いた山を目にすることは、当地でもあります。

損失を出してまではしないでしょうから、多分採算はとれているのだと思います。

多くの山林所有者がそのように管理してくれることが望ましいものの、実際には色々な問題があるために難しいでしょう。

人を雇ったら採算をとるのが難しくなると思われるので、所有者一家に山林管理をするだけの人力の余裕がなければなりません。

高齢化が進む一方の農村地帯で後継者がいるのはごく少数なので、確実な利益の見込めない仕事にまわす労働余力はないでしょう。

なおかつ木を切り出して山から降ろすには、昔のように一本ずつ馬に引かせるというのは不可能ですから、木を積むことのできる大型トラックが通れる道路に接している必要があります。

道路があったとしても山林同様管理されていないのが普通ですし、自身の山林と道路の間に他の人の山林がある場合もあります。

所有している山林が山のすそ野ならまだいいですが、山の上の方であれば、途中の道路を通れるようにするにはかなりの労力を要します。

村社会の集落では通過する予定の道路に接している山林の所有者らに事前に了承を得る必要もあるでしょう。

少し考えただけでも植林された山が管理放棄されしまうのは当然と思えてしまう難問が山積しています。

今後、というか現在進行形でしょうが、所有者が亡くなって相続が発生したら、かつてのような家督相続ではないことから、ますます治山が難事業になることは確実です。

長い目で国土強靭化を目指すのであれば、コンクリートで固めまくる方法もいいですが、自然の力も上手に活用して欲しいものです。

ただ、今のご時世では結局お金の問題に帰結するでしょう。

有効な補助金事業を考え出すか、国が山林を管理する方法を見つけるか、なんらかの斬新な発想が不可欠です。

真に国を愛す政治家か官僚に是非とも解決策をお願いしたいですね、ネットの片隅から。


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