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土石流災害に思うこと (4)

No.215(2018.07.25)


苗木を密植する目的は効率よく材木を生産するためであると前述した。

分かりやすく言えばカイワレ大根のようにモヤシ化して育てるということだと思う。

幹ががっちりした円すい形ではなくひょろひょろな円柱形になるように促成栽培するのだ。

その際山林には山の保水力を維持するなど治山という大切な機能があることは認識されていたのだろうか、疑問に思う。

というのも、教わった中に土砂崩れの話も含まれていたからだ。

山を雑木林から人工林に変えた当初は問題はないものの、年月を経て切り倒した雑木の根が腐った頃に大雨が降ったりすると山の斜面が部分的に崩れることがよくあった、と聞かされた。

生きている生木の枝は折れにくいが、乾燥した枯れ枝は簡単にポキッと折れることは誰しも経験していると思う。

同様に地中の根が腐ればもろくなり、土壌を保持する力は失われると推察される。

その時点で雑木の代わりに植えられた木の根が十分にはっていなければ、地が崩れやすくなるのは自明の理だ。

雑木の根からスギ、ヒノキの根にバトンタッチされる間に、山肌の地が脆弱になることがないよう考慮されていたのだろうか。

また地層、土壌の質や斜面の角度、並びに方角など木の成長に関係する要素や、地下水脈の流れについては。

今ほど物質的に豊かではなかった当時は、国をあげて豊かさを求めて猪突猛進という状況であったであろうから、今の尺度で単純に断罪できないことは承知しているつもりだ。

ただ、その後も国によって人工山林の土砂崩れに関して予測可能な危険度に応じた対応すらとられてこなかった、としか私には思えない。


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