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お墨付きカリスマ (3)

No.115(2003.06.15)


知人の計らいで東京でのセミナーの2日目には控え室で久司道夫氏と直接話す機会を得ました。

桜沢思想に心酔していた当時の私が具体的にどんな話をしたかははっきり覚えていません。

農業に関する取り組みが不足している、とかなんとかいう話をしたような気がします。

短い時間でのやり取りで氏が最後に言ったのは、どうぞボストンへいらっしゃい、という誘いの言葉でした。

それを聞き何か釈然としない気持ちになった私でした。

何故ならその時点で私はボストンへ行く必要性は感じていませんでしたし、行きたいとも思っていなかったからです。

今思えば、それには大阪で経験した嫌な思いも少しは影響していたかもしれません。

が、それよりも私に疑念を抱かせる出来事や情報について既に知っていたからだったと思います。

前年に氏の講演を聞いた隣県のある女性は、氏の思想にすっかり感化されてしまい新婚であるにもかかわらず夫を残して単身ボストンに渡り、後に離婚しました。

彼女の自由意志がなしたことだと言えばそれまでですが、一つの家庭が崩壊したことは事実です。

またボストンで行なわれたサマーキャンプに講師として参加した方からは、表向きの素晴らしさとは裏腹に運営していく上で問題を抱えていることも知らされました。

さらに実際にボストンに滞在した経験がある人からは経済的な面での難しさについても示唆されました。

お金持ちでなくてもボランティアとして仕事を手伝えばボストンに長く滞在することができること。

しかもその際自分の仕事の合い間であれば各種セミナーを無料で聴講できること。

ただし食うには困らなくても現金収入がないので結婚して家庭をもつことはできないということ。

もっとも以上のような欠点はどんな運動や組織にも必然的に伴うものなのかもしれませんが。

振り返ってみると私が二の足を踏んだ一番大きな理由は、氏の思想の大半が故桜沢如一氏が確立したものからなっているという事実を知っていたからでしょう。

前々回に述べたように、久司道夫氏の提唱するマクロビオティックは健康増進という目的では米国である種のお墨付きを得ています。

しかし、その目的が健康増進ではなくガンの治療ということになると、同じ米国で危険視されていることもこれまた事実です。

絶対正しいことなどない、という事実を常に念頭に置きましょう。


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