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生える草の変遷

No.95(2002.09.14)


以前に住んでいたところは既に大型機械でひな壇に造成されていたために表土はやせていましたし、土質も野菜の栽培には不向きなようでした。
近所の農家の方の話によると、根を深くはれない土なので果樹の栽培に最適とのこと。

そんなやせ地に最初に生えてくるのはマガヤやクズなどの絶やし難いほど生命力の強い雑草です。(セイタカアワダチソウも生えてきますが外来種なので別扱いにします)

現在住んでいる場所の周囲は表土がそのまま残されているので多種多様の雑草が生えています。

場所によってはマガヤやクズもそれらの中に混じっているものの、他の雑草を圧倒するようなことはありません。

そのように共存している姿からはやせ地でのマガヤやクズの凄まじい茂り方は想像もつきません。

果樹の株元に毎年大量のマガヤを敷いてその変化を目の当たりにした私は、マガヤやクズはやせ地に最初に生えて年月をかけてその土を肥沃にしていくために存在しているように思えるようになりました。

敷き草を繰り返していると微生物や昆虫、ミミズなどの働きによって耕さなくても敷き草の下の土が柔らかく顆粒状になってきます。
そうなってくると今度はそこに柔らかい雑草が生えてくるのです。

もちろんこれは農薬や化学肥料を使わないという前提でのお話ですが。

またマガヤでは不思議な体験もしました。

やせ地に生えているマガヤは数年で株の直径が1メートル近くにもなるので、根っこごと抜くのは人力では到底不可能です。
そのくらいしっかりと地に根をはっています。

ところがマガヤの株元に敷き草や落ち葉を置いておきそこの土が肥えてくると、株の外側の部分は手で簡単に根こそぎ抜くことができるように変化しています。
ご近所さんはその現象を「根が浮いてくる」と表現していました。

人が手を出さない自然な状態であれば風に吹かれることによって株の外側から倒れていき周囲の表土の形成が加速されます。

土を肥やすという自分の役割を終えたらあとは他の雑草たちに場所を譲る、という道筋ができているのでしょう。

逆境に強く底力がある人のことを良い意味で雑草に例えることがあります。

自ら捨て石になり土を肥やしていき、しかも潔く身を引くマガヤこそは雑草のなかの雑草に思えてきます。

それに比べて除草剤や枯葉剤を作りだして得意になっている人間とは、一体全体どういう生き物なのでしょうか。


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