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農村で暮らす (21)

No.77(2002.03.27)


獅子舞を初体験した祭りが終わってから何日か経ったある日のこと、お隣さんから私に打診がありました。

その年にお隣さんはちょうど集落の氏子を代表する総代という役を担当していたのです。

話を聞くとどうやら神社の宮司が私を社人として迎えたいと望んでいるらしいのでした。

祭りの後に獅子舞で家回りをした際に私が調子にのって叩きまくっていた太鼓を耳にした社人経験者の長老格の方が宮司に推薦してくださっていたのでした。

私は神事の際の楽(がく)には興味をもっていたものの社人の仕事全般に関してはまったく知らなかったので即答はできませんでした。

総代をしていたお隣さんは、存在感を示したいためかとても熱心に勧誘してきて、結局後日宮司と一緒に我家に挨拶に来るという運びになってしまいました。

それから数日後の夜に二人は焼酎を下げて来訪しました。

勢いをつけるためだったのか宮司は既に少しお酒が入っているようでした。

またしても「何も難しく考える必要はない」という怪しい言葉が実務の説明に先行するのでした。

ですのでこちらから質問をして、それに対する回答を頼りに仕事の内容を推察するしかありませんでした。

大きな行事としては、それぞれ年に一度の大祭と神楽がありその際は手当も支給されるとのこと。

それ以外にも年に何度か務めなくてはならない神事もあり、それについては奉仕になるようでした。

日常的な仕事としては地区で葬式があった時に楽(がく)を務めて欲しいとのことで、その際には手当もあるのでした。

要するに拘束日数は少なくてある程度の収入も得られたうえに神事の際に太鼓も叩かせてもらえる。

酔いがまわってきたせいもあって自分勝手に好都合な解釈をしてしまった私は引き受けてみることにしました。


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