トップページへ

電話機難民

No.99(2019.06.10)


科学技術が飛躍的に進歩し続けているさなかにあって、慣れ親しんだ古い道具を使い続けるという選択肢が消滅してしまった分野が数々あると思います。

社会全体が変革することに個人が抗えないのは当然のこととも言えますが。

身近にあり日常的に使うものの中で、ハイテク化で一番変わったものはと問われたら、電話機が思い浮かびます。

スマートフォンが電話機の延長線上のものかどうか、諸説ありそうな案件ですが、今回は関係ありません。

設置型の固定電話機についてのお話です。

実家の母から電話があり、友人の家に電話をかけてもつながらないので困っている、とのことでした。

前回私が帰った際に、私の判断で老朽化した電話機を新しいものに買い替えていました。

高齢の母は変化を好まないので、電話機を新しくしたことが悪かったのではないか、と考えている様子でした。

古い電話機では起きなかった問題だけに、暗に私を責めているニュアンスが感じられました。

私のところへの電話が問題なくつながった理由は、新品を設置した後に緊急時にすぐかけられるようにと私がワンプッシュダイヤルに登録しておいたからだと推察されました。

そのことから、電話機の故障ではなく、かけ方に問題があるのではないかと考えました。

どうやって電話をかけているのかをきいてみました。

まず受話器をとって発信音を確かめてから番号を間違えないように確かめながらかけている、とのことでした。

ダイヤル式電話機の頃にさんざん教え込まれたかけ方です。

その時代と比べると、電話機自体だけではなく電話回線の方式も変わってしまっています。

私は母に、ゆっくりでいいから電話番号を押してから受話器をとってみて、と話しました。

たったそれだけのことで問題は解決しました。

電話番号を押すのに時間がかかり過ぎてエラーになっていたのでしょう。

すべての友人知人に電話がつながるようになったことを確かめた母から喜びの報告電話がありました。

そこで技術の進歩によって電話のかけ方も変ったのだということを説明しました。

そのことには納得した母ですが、何も知らされていなかったことには不満があるようでした。

「受話器を取ってツーという発信音を確かめてからダイヤルを回してください。」

なまじっか普及時期の電話のかけ方が身についてしまっていたために起きたトラブルです。

地上波テレビ番組でワイドショーなどは見ている母ですが、ハイテク化によって生活必需品の使い方が変わったことはアナウンスされなかったようです。

肝心なことは知らされないのですね。

情報弱者は、愚鈍な消費者としてしかみなされていないのでしょう。

デジタルディバイド問題を解決するための予算を組め、と言いたくなりました。


前に戻る 目次へ戻る 次を読む