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他人の処方薬で大火傷 (4)

No.89(2015.04.29)


傷の治りが早くなる温泉は、隣町にあった中津川温泉です。

あった、と過去形になっているのは今はもうないからです。

以前に脛を切ってしまった時に、自宅の温泉が切り傷に良くないこともあって、傷口がなかなか治らなかったことがありました。

その際に、中津川温泉に入ったら一度で傷口が治ってしまったので、非常に驚いた経験がありました。

何故中津川温泉を知っていたかというと、そこは冷泉を沸かした温泉で、原泉を飲料水として販売しており、当時我が家で愛飲していたからです。

その後県下のある飲料用鉱泉で健康被害が発生する事故があったために保健所の検査が厳しくなり、検査費用がかさみ飲料用鉱泉の採算がとれなくなったそうです。

入浴用温泉も冷泉を沸かしていたので利用者が少ないと燃料代で赤字になっていた、とのことでした。

そんなダブルパンチで廃業してしまったのでした。

良いもの必ずしも商売にならず、と我家では随分がっかりしたものです。

それからしばらくして、誰かは忘れてしまったのですが、ある人に中津川温泉の劇的な効能について話したところ、同じ泉質の温泉として湯穴温泉(つあなおんせん)を教えてもらいました。

中津川温泉よりも我家から近かったこともあり、確かめるために連れ合いと入りに行きました。

実際に浸かってみて身体で同じ泉質かどうかは分からなかったものの、湯が透明でないことと、浴槽のふちに温泉の成分が石のように固まって鍾乳洞のようになっていたことから似ていると思いました。

中津川温泉の飲料用の鉱泉水は無色透明なのに、沸かすと白濁したような色になり、同じ様に浴槽のふちに石のように付着していたからです。

傷と火傷は症状が異なりますが、治るのに必要なのは皮膚の復元力という共通点はあります。

薬品で大火傷をした私は連れ合いの助言を受け、湯穴温泉に電話をしてみました。


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