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自然農法断念

No.11(2002.07.26)


自然食や玄米菜食に興味をもち実践し始めた人達は、何故か食べ物の自給自足を目指したくなる場合が多いようです。

食事法を変えた際に、安心して食べられる食材を都会で調達することがいかに困難なことかを実感した私も、ご多分にもれず農業にとても興味をもち始めていました。

そんな折に私は、自然食品店の本棚でたまたま目にとまった福岡正信氏の著作「わら一本の革命」を立ち読みしたことをきっかけにして、一気に彼の信奉者となってしまいました。

ちょうど氏がフィリピンでマグサイサイ賞を受賞した頃だったと記憶しています。

「自然に還る」、「無」三部作と氏の著作はすべて読み、ますます氏の思想に心酔していきました。

玄米菜食を始めて価値観が激変していた時期だったので、この出会いは私の田舎暮らし願望をさらに大きくしました。

最終的に田舎暮らしを決断した時点では、自然農法を試してみることが既に田舎暮らしの目的の一つにまでなっていました。

ですから実際に田舎の住まいを探す際には、農薬や化学肥料で汚染されていないある程度の面積の土地があることを条件にしました。

今思い起こせばこの条件にとらわれ過ぎていたためにもう一つの大切なことを見逃していました。

選んだ場所は南東向きの斜面という好条件だったものの、ひな壇に造成されていたのです。

確かに化学物質で汚染されていない反面、表土が一度奪われているという自然農法を行なうには致命的な欠陥があったのでした。

道理でマガヤ、クズ、セイタカアワダチソウなどのやせ地に生える草ばかりが茂っていたわけで、それらによって私は惑わされていたのでした。

草が生えないところでは自然農法もできない、という原則は数年後に「妙なる畑に立ちて」の著者で自然農法の普及活動をしている川口由一氏の講演を聴いて初めて正しく理解することができました。

私が一年目に福岡氏の本に書いてある通りに自然農法を真似てばらまいた種は野生動物のえさになったことでしょう。

その土地で自然農法が上手くいかないことが分かってからは、藤井平司氏の天然農法のやり方や徳野雅仁氏の著作「無農薬自然流野菜作り」などを参考にして野菜の育て方を修正していき、それなりに収穫できるようになりました。

ごく普通の畑仕事の経験もない人間が見知らぬ土地でいきなり自然農法に挑戦する、などという身の程知らずな行動を起こせたのも、私があまりに無知でかつ若かったからでしょう。

野菜作りのプロであるご近所さん達はそんな私を見てさぞ呆れたことと思います。

なお、山にこもってからは鹿、猪、うさぎなどの野生動物が畑を荒らすので、ほんの小さな家庭菜園で楽しんでいます。


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