2-1.カルテ開示
さて,このカルテに記載された情報を,患者さんは見たがっているのでしょうか. 厚生労働省大臣官房統計情報部の資料 (平成11年 受療行動調査の概要
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jyuryo/00/index.html ) による外来での結果を見ると, カルテの内容を「ぜひ知りたい」あるいは 「病名・病状によっては知りたい」という知りたい人は合わせて63.7%です. 特定機能病院ではさらに高く,70.9%になっています.平成14年 受療行動調査の概要(確定)( http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jyuryo/02/index.html ) によると「ぜひ知りたい」あるいは 「病名・病状によっては知りたい」という知りたい人は合わせて68.7%,同様に特定機能病院で70.9%と増加しています.
では,何故知りたいのでしょうか.同じ統計(平成11年)によると,「受けている治療に ついて理解を深めたい」が 48.3%と最も多く,21%が「病名・病状・治療内容などについて本当のところが知りたいから」となっています.この傾向は平成14年も同じです.
2-2.医療フィルム等の取り扱い
カルテは重要な医療情報ですが,カルテの他にもレントゲンやCT,MRI等の
画像フィルムは,重要な医療情報です.さて,これらはどの様に保管されている
のでしょうか.カルテにカルテ庫があるように,フィルムにはフィルム庫が準備
されていることが多いようです.一般に画像検査が行われる場合,検査の為の書
類が使用されます.これに検査日や検査の種類,患者番号やフィルム番号などが
記載されていることが多いのですが,この書類がカルテに貼り付けられて保存さ
れています.この記載情報をもとに,フィルム庫からフィルムが探し出される場
合が多いようです.勿論,施設によっては他の方法を用いているところもあるで
しょう.
いずれにしろ,フィルムを保管したり,探し出したり,また仕舞ったり するのは結構労力が必要です.レントゲンのフィルムは1枚,2枚では大したこと
はありませんが,重ね合わせて20cmほどになると,一人では持ち上げられない程 の重さとなり,扱いが非常に大変ですから,大量に保管するにはそれなりの設備
が必要になります.そこで,最近は院内のLAN(local area network)の上に画像用サーバを置き,診察室の端末で参照できるようなシステムが使われるようになってきました.(このホームページを立ち上げた頃に比べると現在ではコンピュータサーバによる保存が多くなっています.)
一方、患者さんにとっては,お金を払って撮影した検査結果ですから,治療が困 難な病気の場合は,他の医師に診て貰いたくなることがあるかも知れません.診
察した医師が,専門医に紹介する場合には,紹介状とフィルムの貸し出しが行わ れます.場合によってはフィルムのコピーが作成され,返却不要で提供されます
が,コピーの作成コストは病院持ちであるため,全ての検査についてコピーを作 るようなことはしない場合が多いようです.
始めに診察し,検査を行った医師が, その疾患を専門に治療している医師であった場合,医師はそのまま自分で治療す ることを考えているでしょう.それでも患者さんが他の医療機関の医師に診て貰
いたい場合,患者さんはこの検査を行った医師にフィルムを貸して貰わなくては なりません.フィルムを貸し出すことを拒む権利が医師にあるとは思えませんが,
医師によってはあまりいい顔をしない場合もありますし,最近では減ってきてい ますが,中にはフィルムの貸し出しを渋る医療機関もあるようです.(2005年4月よりカルテ開示は義務化されました.)
また,重大な病気でなくても,患者さんにとっては掛け替えのない自分の
記録ですから,自分で保存しておきたいと思う方がいるかもしれません.
それでは病院や医師に,「この検査フィルムをください.」と申し出たら,
譲ってくれるでしょうか.答えは否です.医療機関には,少なくともカルテは5年,
検査フィルムは2年の保存義務期間がありますから,患者個人に差し上げる訳に
はいかないのです.
では,この保存義務期間が過ぎた画像フィルムはどうなるかというと,通常,医療機関では,不要になった画像フィルムは,フィルム引き取り業者を通して処分されています.よって医療機関で作成された医療画像フィルムが,患者さんのもとに来ることは,ほぼ皆無と言えるでしょう. みなさんは、これで満足できますか.
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