第1章. 現状のカルテについて

患者さん1人に1冊のカルテが理想的なのですが・・・・・

 まず、医療情報の保存の様子を知るために、病院の外来カルテについて話しましょう.

 現在、普通に見られる病院の様子を思い浮かべてみましょう.患者さんは、病院でまず、 受付をします.すると、事務的に患者さんのカルテが探し出され、それが診察室に運ばれます. やがて診察の順番が回ってきて、患者さんは診察を受け、医師はカルテに診療内容を記載します. 患者さんは検査の結果などの説明を受け、 採血データなど説明の一部のコピーを貰ったりすることもあるでしょう. そして診察が終わるとカルテは再び、カルテ庫にしまわれる、というのが一般的です.

 このカルテ(紙のカルテ(電子カルテではない))は, 患者さん一人に対して病院内に一つ存在する(病院内一カルテと呼びます)もあれば, 内科や外科といった科毎に一つずつ存在すること(各科カルテ)もあり,施設によって異なります.

 病院内一カルテでは,内科の医師も眼科の医師も,一冊のカルテに記載を行います. よって,例えば内科の医師は容易に眼科での治療の様子も知ることができるといった利点があります. しかし,患者さんが,同日に複数の科を受診すれば,カルテは各科の外来を順次移動していく必要があり, カルテの搬送に時間とコストがかかります.また,患者としては, 必要が無ければ他の科の医師にはあまり知れれたくないと感じる可能性のあること, 例えば,性病の既往(以前かかったこと)なども,他科の医師に知られる事になります.

 一方,各科カルテでは,例えば,整形外科の医師は内科へ問い合わせなければ, 内科のカルテ内容を知り得ませんから,内科医の病状判定や治療内容を把握するのに手間が必要になります.

 どちらのカルテが優れているかは,病院の規模や診療科の組み合わせなどによって異なりますから, 一概に結論付けられないと思いますが,厚生労働省は,医療過誤を防ぐ意味から, 一患者に一つのカルテを勧めているようです.

最近では医療施設によっては,電子カルテが導入され,病院内一カルテが実現されています.
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