刑務所について誤解されている方がいらしゃるみたいです。
私が良く受ける質問や,理解してもらいたいことをまとめてみました。
暗いイメージを払拭して,明るい社会に貢献できれば幸いです。

ゆりかごから墓場まで

一昔前に総合商社を表現するのに「ゆりかごから墓場まで」と言われた時期がありました。
刑務所も似たようなもので,赤ちゃんの衣類から墓石まで製作しています。
刑務所では社会から作業を募集しております。安い賃金で作業技官の指導の下,確実に実施しますのでお近くの刑務所にご相談下さい。
ただし,食品加工は,収容者がつまみ食いする可能性が高いので遠慮されるかもしれませんので悪しからず。

刑務官と警察官は全く違う職種です。

「仕事は何ですか」の質問に対し「刑務官です」と答えると,「警察官ですか」と良く言われます。
私たち刑務官は法務省の矯正局に属する国家公務員であるのに対し,
警察官は各都道府県に属する地方公務員なのです(地方公務員の方が給料はやや高い?)。
警察官は犯罪者を検挙する(捕まえる)のに対し,刑務官は捕まった人が起訴(裁判を受けること)されてから
刑が確定するまでの間(この間拘置所に収容する)と,刑が確定してから釈放されるまでの間(この間刑務所に収容する)の面倒をみるところです。
ですから,主な仕事は犯罪者が逃げないようにすること(身柄の確保)と,社会で生活できるように教育すること(更生)の2つです。

刑務所で生活するのは簡単?

我が社の塀の中で生活してみたいと思っている方はいませんか?
ところが,我が社で生活するのは至難の業なのです。
少々法に触れてもせいぜい拘置所止まりで,刑務所までたどり着くのは全犯罪のうちの1%(10%だったかもしれません)にすぎません。
検挙者のうちのほとんどは,注意・警告・起訴猶予・執行猶予・罰金・科料・無罪などで釈放されて行きます。
でも,注意して下さい。交通違反の罰金を滞納している人はいませんか?
罰金を完納しないと刑務所に服役して労役場留置者として生活しなくてはいけません。
ここ数年,不景気のせいでしょうか,こういった罰金未納者の労役場留置者が増加しています。

刑務所の受刑者は怖い?

刑務所の受刑者は怖いと思っていませんか?
彼らのほとんどが,親のいうことも聞かないどうしようもない人ですが,あたり構わず暴力を振るったり暴れたりしているわけではありません。
むしろ,この人達はどんな悪いことをしたのだろうと思うくらいに,言葉遣いも良くまじめに働いています。
指のない入れ墨をしている組員がミシンを踏んでいる姿を想像できるでしょうか?

刑務所の仕事は看守(牢番)だけ?

刑務所で勤務するまで私は,刑務官の仕事は鉄格子の中の看守(牢番)が主な仕事だと思っていました。
ところがどうでしょう,刑務所の中には工場があって昼間はそこで働いて晩はマンション?で寝るという生活をしています。
工場には,タンスなどの家具を作る木工場,金属工場,印刷工場,洋裁工場,紙工場,洗濯工場,炊事場,農場など多種多様で
彼らの技能や生活などに併せて振り分けております。
彼らのほとんどは仕事がなくて犯罪を犯しており,まじめに働くことがいかに大事かを物語っています。
そのために,彼らに勤労の喜びや技能を付けて社会に送り出すわけですが,再び我が社にもっどってくる人がいるのは残念なことです。

刑務所の飯はくさい?

とんでもありません。
むしろ,何でこんなに美味しいのだろうと思うくらいです。
特に当刑務所でのカレーライスは講評で,年に1度の誕生日にだされる幕の内弁当よりも,カレーの方が食べたいからと幕の内弁当をキャンセルする人がいるくらいです。
また,正月にはおせちが出て,雛祭りはひなあられ,クリスマスにはケーキ,大晦日には年越しそばといった季節感の料理が出て,近年ではなんと,土用のウナギまで出る始末です。
このメニューを見たらもう「臭い飯を食ってこい」とは,言わなくなるでしょう。