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TEACCH:家庭内の構造化の試み

1999年5月,鈴木めぐみ

うちの長男は自閉症です。
4歳から感覚統合療法とTEACCHを取り入れた療育センターで 就学まで過ごし、現在は障害児学級の小学校2年です。

空間的、時間的構造化を極力心がけた結果、 ひどいこだわりもなくなり、パニックもずいぶんと減って、 良い状態を保っています。

療育センターに通い始めた頃(4歳)には、 すでに文字が読めておりましたので あらゆる持ち物に子どもの名前を書きました。
名前が書いてあるのが「自分の物」だということが解ります。 また、衣類などは、それを目印にして、
前後を確かめて身につけるようにさせました。

タンスの引き出しにも「ぱんつ」「しゃつ」「くつした」… とタグを張り、文房具やその他のおもちゃ類も 片づけ場所を決めて、それぞれの場所に 片づける物の名前を書いて、一目瞭然にしました。
(しかし、これはどこの幼稚園や保育園の教室にも 見られることですね。それを家でもやっただけです。)

すると、子供が自分だけで出来ることが増えました。
絵を描きたいと思っても、「紙とクレヨンを出してくれ」 (あるいは、クレーン)と言わなくてもいいのですね。
言葉で話すことをを強要すると、かえって話すのが おっくうになるように思いました。
本人が楽に生活できるようになるので、 精神的に安定してきます。

大変なのは、時間の方です。
1日のタイムスケジュールを決め、極力守るようにしました。
外出しても、昼食は12時、おやつは3時…です。
仕方なく変更しなければならないときは 事前にしっかり説明して納得させます。
その時も、うちの子の場合は、字と時計の絵とで紙にかいて 見せておかなければなりませんでした。
口で説明しただけでは、すぐ忘れて、パニックでしたから。
そうしているうちに、次第に、口頭の説明でも 理解できるようになり、今では少々の変更なら 対処(あるいは、我慢)できるようになっています。
(それでも、事前に分かっている変更はしっかり説明します。)

私はTEACCHを体系的に勉強したわけではありません。
「自閉症療育ハンドブック」(佐々木正美)を読んだのと 園長の指導:「子どもにわかりやすい環境を作って下さい」 とを試行錯誤しながら、生活に取り入れただけです。
でも、長男だけでなく、(彼が精神的に安定しているので) 私も、家族の他の者も暮らしやすくなったように思います。


コメント(by伊地知)
TEACCHは,単なる治療プログラムではなく,自閉症児を取り巻く環境を変えていくための理論体系という非常に重要な側面を持っています(文献).TE ACCHの発祥地であるアメリカのノースキャロライナ州は,TEACCHプログラムを公的政策(public policy)として受け入れ,大学を中心と して州全体を構造化しているわけです.このようなTEACCHプログラムの理念は,「健常者の方を変えていく」ために,日本でももっと応用さ れるべきものと最近は考えております.構造化の中身は,けっして特殊なものである必要はなく,鈴木さんも書いておられるように幼稚園や保育所 でよく見かけるちょっとした工夫があるだけで,自閉症児は優れた潜在能力を発揮することができます.


文献
Shopler E. Implementation of TEACCH philosophy. In. Handbook of Autism and Pervasive Developmental Disorders (2nd. ed.). edited by Cohen DJ and Volkmar FR. John Wiley & Sons, Inc. New York. 1997, p767-p795.


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