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治療薬に関する話題

1998年5月、伊地知信二/奈緒美

自閉症における薬物療法は,あくまでも補助的なものであり,薬物療法を行うべき状況は非常に限られています(文献1,2).薬物療法が選択肢のひとつになる可能性は,本人にとって有益な体験を増やしたり,効果的で集中的な行動療法を可能にするための一時的な手段としてだけであって,投薬は集学的療育グループの一員として参加している医師が行うことが望まれます(文献1).以下に,自閉症で使われることのある薬剤の最新の話題を三つ紹介します.


SSRI(選択的セロトニン再吸収阻害剤)は,一部の自閉症者において,こだわりなどに有効で,社会適応性が向上したと報告され話題になった薬剤ですが,副作用についても以前から話題を欠かない抗うつ剤です.SSRIを抗うつ剤として使用した場合,投与を中断した時の禁断症状が話題となっており,ロンドンの消費者団体Social Auditのホームページでは,SSRIが薬物依存症を誘発する可能性について警鐘を鳴らしています(文献3).


SSRIのひとつであるフルオキセチンは,内服による副作用が10〜25%も出ることが知られており,吐き気,心気症,不眠,頭痛,振戦,口渇,発汗,下痢,性機能障害などが報告されています.加えて,最近,投与中の再生不良性貧血の例が副作用例として報告されました(文献4).


リタリンも抗うつ剤ですが,注意欠陥/多動性障害の治療薬として知られており,アメリカでは自閉症児の多動にもよく使われる薬です.平成10年4月9日の朝日新聞に,「受験の息子にドーピング/母親の医院長向精神薬渡す」という記事がありました.これは,「集中力を高める」とか「覚醒作用がある」などの理由で,受験生の母親が不正にリタリンを息子に投与していたというもので,アメリカでのリタリン乱用問題と背景がいっしょのようです.


文献
1. Wing L. The autistic spectrum. Lancet 350: 1761-1766, 1997.
2. Rapin I. Autism. N Engl J Med 337: 97-104, 1997.
3. Bonn D. Antidepressant dependence controversy moves to Internet. Lancet 351: 1263, 1998.
4. Bosch X & Vera M. Aplastic anaemia during treatment with fluoxetine. Lancet 351: 1031, 1998.


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