(文献1の概訳)
(目的)セクレチンの静脈内注射の1回投与が自閉症児において社会性スキルやコミュニケーションスキルの検出可能な改善につながるかどうかを検討する.(研究デザイン)自閉症児60人は,無作為に選択され無作為に治療群とプラセボ群に振り分けられた.治療群では体重1kgあたり2.0臨床単位のセクレチンを1回だけ静脈内投与した.プラセボ群では生理食塩水の注射を行った.神経発達評価および行動評価は全員において,注射前と注射後3週と6週に行った.(結果)言語スキルの評価と親による行動評価は,治療群とプラセボ群で結果に有意な差がなかった.自閉症症候の重症度を評価するRaters評価法でも注射後6週間で2群間に差はなかった.危険率0.051という,統計的に有意といえるレベルに近い程度の改善が治療群の自閉症行動において3週間後に見られた.(結論)セクレチン静注1回投与法は,親による自閉症行動評価においても言語スキルにおいても,注射後6週間では有意な効果は得られなかった.一過性の,もう少しで有意になる程度での自閉症行動の改善は何人かの子供たちで起こったのかもしれない(注射後3週間).
(文献2の概訳)
(背景と目的)セクレチンが自閉症に有効であるとする逸話的報告は自閉症の治療において大きな希望をもたらした.当初の1回投与での無作為コントロール治験は,セクレチンの効果を示すことができなかった.今回の研究は反復投与についての最初の報告であり,セクレチンが有効となるサブグループが存在するのかどうかをも検討する.(方法)自閉症児64人を検討した.年齢は2歳から7歳で,55人が男児,9人が女児.IQおよび言語能力は無作為に二重盲検法で割り付けられ,セクレチン投与群とプラセボ群に分けられた.プラセボおよびセクレチンは6週間の間隔を置き,2回投与され,評価は投与前とそれぞれの注射の3週間後にいくつかの評価法で行われた.(結果)言語,認知,そして自閉症症候の正式な表価値に関しては,プラセボ群とセクレチン群で差がなかった.認知レベル,下痢の有無,退行現象の有無などでサブグループ化してもセクレチンの有意な効果は認められなかった.(結論)ブタセクレチンの繰り返し投与の自閉症に対する効果についての証拠は得られなかった.生物学的症候の改善と,スキルの達成度の向上との間に関係がある可能性を検討する.
2. Roberts W, et al. Repeated doses of porcine secretin in the treatment of autism: a randomized, placebo-controlled trial. Pediatrics 107: e71, 2001.