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セクレチン騒動から学ぶべきこと
セクレチン・自閉症(1)


2000年2月,伊地知信二・奈緒美

Horvathらの報告(文献1)に前後して,アメリカではマスコミが「セクレチンの注射が自閉症に有効」と報じたため,大騒ぎが起こりました.この騒ぎは,インターネットを通じさらに広域化し,日本でもこの話題を耳にした方がおられると思います.Horvathらの報告は,3例の自閉症児に関してで,消化管の検査のためにブタセクレチンを注射したところアイコンタクトや言語能力が著明に改善(a dramatic improvement)したと論文に記載されています.マスコミの報道をみて「自閉症が治る」とかんちがいした親たちをターゲットにして,アメリカではブラックマーケットが暗躍したとのことです(文献2).しかし,現在までのところ,二つの臨床治験(二重盲検プラセボ対照)の結果が否定的な結論をだしました.その内容を以下に表にして紹介します.Owleyらの報告は論文紹介のところにも掲載してあります.

報告者自閉症児の数投与方法など結果文献
Owleyら20人ブタセクレチン(2CU/kg,一回静注)
二重盲検プラセボクロスオーバー試験
セクレチンの効果なし文献3
Sandlerら56人人セクレチン(0.4μg/kg,一回静注)
半分は二重盲検で生食静注
セクレチンの効果なし文献4

最初のHorvathらの症例報告が,ブタのセクレチンで,40%もの混入物があり,何か他のものが効いていた可能性も示唆されています(文献5)が,結論としては,プラセボと比較して検出できるほどの効果はないわけです.マスコミからの情報には,客観性のない強調と陽性データをもてはやす強烈な公表バイアスが含まれている可能性がありますので,皆さんもご注意ください.


文献
1. Horvath K, et al. Improved social and language skills after secretin administration in patients with autistic spectrum disorders. J Assoc Acad Minor Phys 9: 9-15, 1998.
2. Volkmar F.R. Lessons from secretin. N Engl J Med 341: 1842-1844, 1999.
3. Owley T, et al. A double-blind, placebo-controlled trial of secretin for the treatment of autistic disorder. Medscape General Medicine(インターネット).
4. Sandler AD, et al. Lack of benefit of a single dose of synthetic human secretin in the treatment of autism and pervasive development disorder. N Engl J Med 341: 1801-1806, 1999.
5. Ahmad K. Secretin may not be effective in treatment of autism. Lancet 354: 2140, 1999.


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