このペントキシフィリンは,脳のセロトニン系に対する作用を持っており(文献3),また,自閉症における自己免疫説(文献4)や炎症反応の関与などが話題となっている中,自閉症の治療薬としての可能性が再指摘されました(文献5).
(自閉症に対するペントキシフィリンの効果:文献5に総括)
1978年 Sogame:器質的疾患による行動異常や自閉症児に本剤を使用.23人の自閉症児のうち10人が著明改善,8人がかなり改善,3人がわずかに改善,2例は不変と報告.
1980年 Nakane:50例の自閉症児に本剤を投与.そのうち30例が評価され,20%が著明改善,47%がわずかに改善.併用薬にハロペリドール.
1981年 Shimoide:20人の自閉症者に本剤を投与.35%が客観的評価スケールで改善.有効例のほとんどは6歳以下.
1981年 Turek:2名の自閉症児を含む20人に本剤を使用.自閉症児では音節や単語の発音に改善がみられたとしている.
1984年 Suzukiら:20例の自閉症児に本剤を投与し,脳波を評価した18例中7例に脳波変化を認め,友達と遊ぶことや個人的コミュニケーションにおいて改善がみられたとしている.
臨床的な今後の進展は,他の治療薬と同様に,厳密なコントロールを置いた治験や,薬剤を変更して変化をみるクロスオーバー治験を行えるか否かにかかっています.
ペントキシフィリンが,自閉症に有効である可能性を示唆する,基礎的事実としては,血流改善作用やTNF-α分泌抑制作用が注目されています.脳のセロトニン系に対する作用としては,本剤はセロトニンの合成と放出を促進し,また,その吸収を阻害すると言われており,結果的にセロトニン系のシナプス前反応を増強することが予想されています(文献5).