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自閉症傾向・多動傾向の脳外科手術の問題点(6)
(軽度の三角頭蓋に対する形成術)
:S先生からの返答メールの内容


2001年4月,伊地知信二・奈緒美

自閉症傾向・多動傾向の脳外科手術の問題点(5)で掲載しました質問にS先生が昨年12月29日にご返答くださり,S先生のご許可をいただきここにその全文をご紹介します.掲載が大幅に遅れまして本当に申し訳ございませんでした.私(伊地知)がコンテンツ更新のための時間を作ることができなかったことが理由です.質問文をボックス内に表示し,その後にS先生の返答文を併記します.

1. S先生の基準での軽度三角頭蓋は,本当に健常者の中には存在しないのですか?
 頭蓋の形状も大きさも,原則的には量的形質(quantitative traits)ですので,特別な疾患以外は連続する分布をとるはずです.ご返答ではヘリカルCTでは正常な例と(軽度三角頭蓋は)明らかに区別がつくと書かれておりますが,これは常識的には信じ難いことです.実際に健常児を同じ診察基準(触診・視診)で検討されたのでしょうか?

(質問1に対する返答)画像で三角頭蓋と診断される児でも症状を持たない軽度の例がこれまで通常とされていたのは、先生も多くの論文を御読みになっているので御解りのことと思います。一般の児でどうかというのが質問の要旨かと思いますが、触診で眉間の部一部に骨のridgeを触れることはよくあります。私たちの治療を受ける児はそれが大泉門のあった部の近くまでそれを触れます。正常な児はそこまで触れません、触れたら上記の軽度三角頭蓋ではと思います。画像は、これまで頭部外傷や頭痛で来院した児達のを撮り比較してきたので間違いないでしょう。ridgeは無く、またあっても低く、最も違うのは前頭蓋窩が大きく(治療例に比し)、前頭葉が大きく見えることです。  とにかく、症状があって画像の所見の在る児しか治療の対象になりません。

2. 手術をした例と,手術を拒否された例の経過フォローの比較データはもう発表されたのですか?
 学会レベルであれば,是非論文発表されることをお願いいたします(論文発表済みの場合はごめんなさい).

(質問2に対する返答)非手術例は多くは無いですが比較して論文にするところです。

3. SPECTのSPM解析は行わないのですか?
 大学で検査をされているとのことですが,大学なら疾病コントロールデータを設定できるはずです.是非SPM解析でご指摘されている脳の血流低下を証明し論文発表してください.ご存知のように自閉症やADHDの前頭葉脳血流量に関しては長い議論を経ており,全ての専門家が納得する結論はでておりません.

(質問3に対する返答)幼児の確率されたテンプレートが無いのではという話しです。

4.県立那覇病院脳外科へ顔貌の異常で紹介された患者の何%に発達障害があるのですか? 同小児科外来の発達障害児の何%に軽度〜中程度の三角頭蓋例があるのですか? だいたいの数字でけっこうですので教えていただきたい.

(質問4に対する返答)選択されてくるのでその率はかなり高いと思います。恐らく8割以上と思われます。

5.インフォームドコンセントのための親への説明書には研究と書いてあるのですか?
 今回のご返答(小児の脳神経)で,S先生は生物医学的研究であることを否定せずに,Collmannらのコンセンサスからは逸脱する医療行為であることをはっきりと認めておられます.また,論文中では「多動傾向や自閉傾向も(手術後)改善していると著者らは確信している」と記載されており,この点も関連学会のコンセンサスから逸脱しております.従って,インフォームドコンセントのための説明文には研究であると明記する必要があると思います(既に明記してあればごめんなさい).

(質問5に対する返答)研究とは思っていませんので明記はしていません、しかし、先生のメイルアドレスを入れて実験とまでいう批判があることは入っています。論調は、手術の評価を積極的アピールしているわけではありません。

6.開催された院内倫理委員会では研究デザインについての議論はあったのですか?
 繰り返しお願いしておりますが,発達障害に関する臨床治療研究は,プラセボ効果が膨大なため研究デザインの詳細な検討が不可欠となります.

(質問6に対する返答)研究デザインの検討はありませんでした。    症例がpathologicalであるかどうかをよく説明しました。



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