自閉症傾向・多動傾向の脳外科手術の問題点(16)

(軽度の三角頭蓋に対する形成術)

:見解の矛盾点について


2003年11月,伊地知信二・奈緒美

沖縄県立那覇病院 S先生,SS先生,N院長先生

沖縄小児発達センター O先生

                                                                                                                平成151121

 

前略

先生方には,いつも一方的にお願いばかりしておりますが,私どもの活動の動因も先生方と同じであり,「発達障害児のため」であることを是非ご理解いただき,見解の相違を少しでも小さくしていくためにご協力いただきたいと考えております.

先生方は “・・・therefore the procedure is not considered to infringe on patients’ rights under the Helsinki Declaration(人を対象とする実験的臨床研究の倫理的規範を記載しているHelsinki宣言が規定する患者さんの権利を侵害してはいない)”(Child’s Nervous System 18: 661-662, 2002)と明言されておられます.ご存知のようにHelsinki宣言は,研究としての側面を含まない治療における患者さんの権利を記載したものではありませんので,先生方がおっしゃるようにHelsinki宣言に即しているのであれば,Helsinki宣言に書かれているように研究としてのインフォームド・コンセントが成され,研究として倫理委員会が審査したということになります.

ところが,日本児童青年精神医学会の倫理委員会の質問状に対して,先生方は,「これは診療(治療)であって研究(人体実験)ではありません」と文書で返答され,研究としてのインフォームド・コンセントは実施しておらず,研究としての倫理委員会審査も行っていないとはっきり書いておられます.

先生方のご見解のこの矛盾点を公に明らかにし,解消していくことが,今後の優先課題のひとつであると考えております.同封しますのは,Child’s Nervous System誌より依頼され,発達障害治療研究における実験的臨床研究の重要性を指摘しました私どもの拙論文です.その中には,「証明されていない治療法は特に発達障害領域では可及的速やかに研究として行わなければならない」点と,「非常に効果が期待できる治療法であっても,その研究的側面はインフォームド・コンセントや倫理委員会レビューのために完全に明らかにされ,(臨床)トライアルは臨床研究と認識されなければならない」という大原則を記載いたしました.是非ご査読ください.

草々

896-1411

鹿児島県薩摩郡下甑村長浜8-3 長浜診療所

伊地知信二


www.iegt.org


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