Sorry, so far only available in Japanese.
MMR・自閉症・腸炎(12)
Taylor先生のレター

2001年1月,伊地知信二・奈緒美

MMRワクチンと自閉症とは関連がないと報告したTaylor先生の論文(文献1)に対する意見(MMR・自閉症・腸炎(9)で紹介ずみ:文献2)へのTaylor先生自身からの反論です.


(文献3の概訳)
MMRワクチンが自閉症の原因となるというアイデアの発案者(支持者)は,2つのエビデンスを引用する.1つはワクチン接種開始後の明らかな自閉症児の増加で,もう一つはワクチン接種後2−3週以内に行動上の退行が起こるということである.しかしどちらも立証されていないのである.

Raymond Gallup(文献2)は,我々が公衆衛生に関する権威者のところの職員であるからとして,我々の所見をバイアスがかかっているとかたづけている.そのような考えはばかげており失礼である.我々はMMRに関連する他の副作用を同定し報告もしているのである.我々がアメリカ議会委員会に対し直ちにデータを提出できなかったことを理由に,我々が何か隠しているかのような解釈をしているが,それも同様に誤った解釈である.患者の秘密保持に関連する倫理的および法的な問題,データの所有権の問題,さらにデータ保護の問題などが解決されなければそのような要求に答えることはできないのである.Gallupは説明もなしに我々の方法に欠陥があると断言している.彼はAndrew Wakefieldが2000年4月6日に公聴会で証言した間違った情報のことを言っているようであるが,国立統計局が我々の方法が間違っていると表明したとするこの誤報は完璧に根拠のないものであり,Wakefieldはこの発言を取り下げるべきである.

J.H. Roger(文献2)は,我々の研究デザインが間違っていると述べたが,この批判は重大であり,国立統計局の会議の席上でそのことを彼が表明しなかったことが驚きである.我々は彼の主張を拒絶する.なぜなら彼は我々を根拠もなく批判しているからである.Wakefieldの仮説を生み出したデータは,MMRと最初の行動学的症候(典型的には退行)の間の期間が24時間から2ヶ月と示唆している.この所見はDavid Throwerのレター(文献2)に代表されるように親の報告により支持されている.ゆえに,退行およびその他の自閉症のマーカーとMMRの間に密接な時間的な関連があるという仮説を検証することは必須である.我々の方法はこの目的に関して完璧に適切である.

Rogerは我々がケース・コントロールデザインを使うべきであるとほのめかした.我々は1987年以後に生まれた自閉症ケースにおける1回目のMMRワクチン接種率と母集団における1回目の接種率を比較した.このデザインは厳密な適合はなされていないがケース・コントロールデザインと同じであり,コントロールとして全集団を使っている.結果は自閉症と母集団で差はなく,さらに摂取率は,自閉症発生が明らかに増加している時でも一定であった.これらの所見はThrowerとGallupの言う自閉症児の増加がMMRワクチンでは説明できないことを示すさらなる証拠を提供する.

Rogerは長期間にわたる関連を調査するにはケース-シリーズ法は適切でないと述べている.長期の誘導時間を想定して再構築されたWakefieldの仮説に対応して,我々も我々のデータを新しい方法で解析した.結果はやはりネガティブで,MMRは接種後のいかなるタイミングでも自閉症のリスクを増加させないという結果であった.

最後に,Rogerは退行は親が懸念を最初に抱いてから6ヶ月後に起こるのが典型的なケースであると述べたが,これも間違いである.最初の懸念と退行の両者の日付を記録していた93ケースでは,親の最初の懸念が退行よりも前であったケースはたったの21例である.我々が引用した親の懸念から診断までの期間の中央値は間違いであり,正しい値は典型的な(core)自閉症198例で19ヶ月,非典型的な自閉症100例で18.5ヶ月,アスペルガー症候群47例で48ヶ月であった.

国立統計局での会議でのRogerの話は感動的であった.我々は,彼を含む自閉症児の親たちが自閉症の原因に関する研究が行われることを希望する意見を大いに支持する.しかし,たくさんの子供達を死や障害から救ってきたワクチンを根拠もなく非難するような人々は,自閉症の原因解明を願っている児や親や専門家たちに何も貢献しない.


文献
1. Taylor B, et al. Autism and measles, mumps, and rubella vaccine: no epidemiological evidence for a causal association. Lancet 353: 2026-2029, 1999.
2. Lancet 356: 160-162, 2000.
3. Taylor B, et al. Response to the MMR question. Lancet 356: 1273, 2000.


表紙にもどる。


ご意見やご質問のある方はメールください。

E-mail: shinji@po.synapse.ne.jp