社会性とこだわりの独立性

Plomin R. The British Psychological Society Conference, March, 2003(http://www.observer.co.uk/uk_news/story/0,6903,915133,00.html)

訳者コメント:

行動と遺伝に関するオピニオンリーダーであるPlomin先生が,本年度のイギリス心理学会総会で発表したとして報じられた内容です.論文はまだMedline上にありません.非常に重要な内容ですので,論文を見つけ次第,詳細をご紹介する予定です.とりあえず,記事の内容だけを掲載します.

(概訳)
イギリスでは毎年数千人の自閉症児が自閉症として登録されている.この深刻な精神疾患は単一の心理学的状態ではないことを科学者たちは発見した.研究者たちは自閉症が,実際それぞれ異なる遺伝子セットでコントロールされている二つの異なる状態の組み合わせてあることを発見したのである.この発見は,2003年3月15日の英国心理学会総会においてその概略が発表され,心理学者たちはこの内容に強い興味を示すことが予想される.多くの人々は,自閉症の遺伝的原因が発見され,新しい治療法が見つかる見込みが有意に加速したと信じている.

ロンドンの精神医学研究所のRobert Plomin教授は「事実上,我々は自閉症のようなケースは他にないと考えているが,ひとりの子供に同時に起こる二つの異なる状態が,我々が自閉症児の特徴と考えている症候を誘発するのである.」と述べた.「この発見は自閉症児を援助することにおいて大変な意義を持っている」

自閉症者は,融通の利かない,強迫的な行動をとり,多くは家族メンバーとのかかわり合いの能力がない.また,よりやっかいなことには,自閉症ケースの数は近年急速に増加しており,毎年イギリスでは2000人が新しく診断される.しかし,科学者たちは未だに,自閉症がなぜ起こるのかについて確信がない.

典型的には,自閉症児は2−3歳の頃にその症候を示し始め,衝動的で内気で,またかんしゃく持ちでもある.

精神医学研究所のAngelica Ronald医師は,「診断は二つの観察に依存している」と言う.「まず第一に,社会的な要素である.自閉症児は他人がそれぞれ自分の心を持っていることに気づかない.自閉症児は機転がきかず,コミュニケーションが苦手である.第二に,社会性と関連のない要素がある.自閉症児は物に対して強迫的であり,場所やイベントの詳細に夢中になる.」

過去においては,心理学者はこれらの二つの症候セットには同じ原因があると考えていた.しかし,Ronald医師とPlomin教授が中心となって行った4000ペアの双生児大規模研究は,そうではないと結論したのである.自閉症の2セットの症候は実際まったく別々に獲得されていたのだ.「この2セットの症候は,それぞれ完全に異なる二組の遺伝子群と関連している」とRonald医師は述べた.「両者の極端バージョンを受け継いだ場合だけが,完全な自閉症の症候を呈することになる」

Plomin教授は,「これらの遺伝子の場所は同定されていない.今,我々はその理由がわかったのである.二つの状態を一つとして検討してきたことに問題があったのだ」と付け加えた.


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