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一卵性双生児不一致例の比較

Kates WR, et al. Neuroanatomical and neurocognitive differences in a pair of monozygous twins discordant for strictly defined autism. Ann Neurol 43: 782-791, 1998.
(概訳)この研究は,7歳半の一卵性双生児例で,片方(A)が自閉症の診断基準を満たし,もう片方(B)が診断基準を満たさないケースの神経解剖学的検討である.両者の共通点と相違点を明らかにすることで自閉症の病態についての重要な示唆が得られる.Bは,自閉症の診断基準は満たさないものの,社会的相互関係や複数人数での遊びが苦手で,広い意味での自閉症傾向を有している.Aでは,Bに比較して,尾状核,扁桃体,および海馬の低形成と,小脳虫部第Y第Z小葉の低形成がみとめられた(MRI所見).健常者との比較で,両者とも上側頭回と前頭葉に低形成があった.Aのみにみられた皮質下ネットワークの低形成所見は厳密な意味での(診断基準を満たす)自閉症の背景であり,両者に共通する二次皮質ネットワークの低形成所見は広い意味での自閉症傾向に関連していることが示唆される.


(解説)貴重なデータですが,残念ながら一組だけの報告です.自閉症者と健常者の間にはっきりと線をひくことはできない(文献1)のですが,一卵性双生児例での一致率(2人とも自閉症)は,診断基準を使うと60%程度で(文献2),診断基準を満たさない自閉的傾向まで含むと90%です(文献3).このケースは一方が診断基準を満たす自閉症で,もう一方が自閉的傾向のある診断基準をみたさない例です.「皮質ネットワークの低形成は自閉的傾向に関与し,加えて皮質下ネットワークの低形成までくるとその傾向は診断基準を満たすようになる」とする説は今後の多数例での検討をするべき仮説だとは思いますが,そんなにはっきりとした結論はでないだろうと考えます.


(文献)
1. Wing L. The autistic spectrum. Lancet 350: 1761-1766, 1997.
2. Plomin R. et al. The genetic basis of complex human behaviors. Science 264: 1733-1739, 1994.
3. Rapin I. & Katzman R. Neurobiology of autism. Ann Neurol 43: 7-14, 1998.

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